過労死防止基本法・100万人署名実現に向けて

2012年04月25日

弁護士 瓦 井  剛 司

  1.  「過労死のない社会の実現」を目指し、全国過労死を考える家族の会及び過労死弁護団全国連絡会議が呼びかけ人となって、「過労死防止法制定実行委員会」(以下、「実行委員会」といいます。)が立ち上げられました。実行委員会は、過労死根絶を願う人々の声を、世論として国会に届けて「過労死防止基本法」に結実させるべく、100万人署名活動を行っています。
     過労死防止基本法は、①過労死はあってはならないことを、国が宣言すること、②過労死をなくすための、国・自治体・事業主の責務を明確にすること、③国は、過労死に関する調査・研究を行うとともに、総合的な対策を行うこと、の3つを柱とする基本法です。
  2.  2012年3月2日に、実行委員会大阪支部の立ち上げイベントとして、エル・おおさかにて、「ストップ!過労死 大阪のつどい ―過労死防止基本法の制定を―」が開催されました。署名活動を今後いよいよ盛り上げていくための旗揚げの集いです。  名の方が参加され、熱気あふれる良い集いとなりました。
     
    (1) 舟木弁護士と、大阪職対連の藤野さんの司会進行のもと、まず、実行委員会委員長の森岡孝二関西大学教授から、「今なぜ過労死防止基本法が必要か」と題して経過報告が行われました。三六協定・特別条項の存在により労基法がザル法になり、過酷な過重労働が常態化している現状。家族、個人、企業の努力だけでは現状は打破できず、さりとて労基法の改正では時間がかかり過ぎる。そこで、過労死防止の一点に絞り、使用者も含め誰も反対できない法律をつくって過労死をなくすのだという過労死防止基本法の意味づけが語られ、国会議員を動かすべく100万人署名を達成しようとの力強い呼びかけがされました。

    (2) 木津川計さんによる、記念講演「命より大切な仕事って何ですか?」では、「道楽」「余暇」などの言葉が実は過労死の話と堅く結びついているという、斬新かつ興味深いお話が聴けました。例えば、「余暇」という言葉は本来「自由であることを許されている」との意味でしたが、明治以降、国が、低賃金長時間労働をさせ脱亜入欧を達成すべく、勤労の美徳をあおった結果、「余った」「暇」というネガティブな訳にされてしまったとのことです。国によるマインドコントロールから目覚め、人間らしい生活を取り戻すため、過労死防止基本法の制定を目指そうとの呼びかけで記念講演は終わりました。

     (3) 実行委員会事務局長の岩城弁護士の司会進行によるリレートークでは、まず、過労死遺族の声として、ご主人を亡くされた塚野さんから、将来社会に出る娘さんのために「過労死」を死語にしたいとの切実な思いが語られました。続けて、女手一つで育ててきた大切な一人息子を亡くされた西垣さんから、過労死防止基本法で若者の過労死にストップをかけたいとの思いが語られました。「息子は生きがいだった。」「裁判で勝っても息子は戻ってこない。」「私の老後に大切な息子はいない」との訴えには涙が出ました。次に、労働現場からの声として、大阪教職員組合の藤川さんから、教師の中で過労死ラインの人が  %もいるといった学校の現状を改善したいとの決意が語られました。若者が運営し、若者の労働相談を受けるNPO法人・POSSEの川村さんは、新たな犠牲者を防ぐため防止法制定を実現したい、署名活動などの中で、労働問題を多くの人に認知してもらいたいとの考えを話されました。大阪青年ユニオンの北出さんは、「過労死を許さないという法律を制定させる力がある」ことを見せつけることに大きな意味がある、と、署名活動の意味を強調されました。
     
    (4) 全国過労死を考える家族の会代表の寺西さんの音頭によるアピール文採択の後、過労死弁護団全国連絡会議代表幹事の松丸弁護士による「署名運動を進める中で日本の働く文化を変えよう」との閉会挨拶で、会は幕を閉じました。会場の皆さんも絶対に過労死防止基本法を制定しようとの思いを強くされたと思います。

  3.  3月7日(水)には、過労死防止基本法制定に向けて、第3回の院内集会が衆議院議員会館にて、開かれました。当日は、ちょうど国会日程と重なってしまうなどで議員の参加が危ぶまれましたが、蓋を開けてみれば、議員や議員秘書も多く参加され、過労死防止基本法制定に向けての意欲を語って下さいました。参加者は約200名にのぼり、満員の会場は、何が何でも過労死防止法を実現するのだという熱気と迫力に包まれていました。
     集いにも参加して下さった西垣さんや、小学校1年生のとき、父を過労死で亡くし、「僕の夢」という詩(署名用紙にも掲載しているものです。)を書いた辻田さんらご遺族の発言もありました。辻田さんの「仕事のための命でなく、命のための仕事」「命こそ宝」「「過労死・過労自殺というものがこの世からなくなってほしい」とのメッセージは、国会議員をはじめ、会場に集まった人たちの心に重く響いたことでしょう。
  4.  いま、全国で、100万人署名にむけた活動が行われています。弁護士、過労死を考える家族の会の皆さんはもとより、各地の労組のみなさんをはじめとする多くの方々が、積極的に署名集約に協力して下さっています。皆の願いはひとつ。過労死のない社会の実現です。
     4月19日には、集約された署名数が  万筆を超えました。しかし、100万人署名達成・過労死防止基本法制定実現への道のりは、ここからが正念場です。再来月、6月6日には、衆議院議員会館にて、第4回の院内集会が開かれます。この院内集会で、1筆でも多くの署名という形で、過労死のない社会を実現したいという人々の声を届けたいと思います。署名活動の一層の推進に向け、皆様のより一層のご協力をよろしくお願いいたします。