民主法律時報

セブン-イレブン・ジャパン 独禁法違反被疑事件(公取委申告の報告)

弁護士 青 木 克 也

1 はじめに

令和4年3月28日、鹿児島県で前年11月までセブン-イレブン加盟店を経営していた岩崎健一さんが、株式会社セブン-イレブン・ジャパンの取引行為は独占禁止法に違反するとして、公正取引委員会に申告を行った。

岩崎さんは、令和3年10月、セブン-イレブン本部からフランチャイズ(FC)契約の解除を迫られているとして、民法協の「中小零細事業主のための独禁法研究会」に相談を持ち掛けた。同研究会のメンバーでもあり、令和元年12月にセブン-イレブン本部からFC契約を解除された松本実敏さんの協力のもと、弁護団を組んで対応を検討し、公取委への申告と記者会見に踏み切った。

2 紛争の経緯

(1) 開業

岩崎さんは、平成23年11月にセブン-イレブン本部とFC契約を締結し、平成24年2月に鹿児島県内でセブン-イレブン加盟店を開業した。岩崎さんはオーナー店長として熱心に店舗業務を行い、業績は一貫して好調であった。

(2) 災害時の納品問題
令和元年6月下旬から7月上旬にかけて、九州南部を中心に記録的な豪雨が発生し、岩崎さんの店舗を含む各店舗への商品の配送が大幅に遅延した。

各店舗への日々の納品は、通常、1便・2便…というように複数の時間帯に分けて行われるが、前記のような災害時などには、1便の商品が所定の納品時刻に間に合わず同日の2便や3便と一緒にまとめて(あるいは翌日以降に)配送されるといった事態が生じることがある。

しかし、セブン-イレブンの商品管理システムでは、加盟店がSTと呼ばれる専用機器を使って検品(発注した商品の種類・数量と、実際に納入された商品の種類・数量が一致するかのチェック)を行う際、前の便の検品が終わらなければ次の便の検品に進めない仕組みとなっている。そして、複数の便がまとめて納品される際には、どの商品がどの便なのかが区別されておらず、STを使った検品は困難を極めることとなる。

このような場合、加盟店は、STに納品数をいったん「0」と入力してST上の処理を終わらせ(「ゼロ修正」と呼ばれる。)、事後的に本部が送付してくる仕入伝票を承認するよう、本部から求められる。すなわち、加盟店は、発注内容との一致を自らチェックすることができないまま、本部の言うとおりに納品を承認するよう求められるのである。

(3) 本部社員によるストアスタンプの盗用
岩崎さんは、以上のような仕組みに納得ができず、ゼロ修正を余儀なくされた分の納品の承認を拒んだ。すると、令和3年7月31日、本部社員2名が岩崎さんの店舗を訪れ、「今日中に承認してもらわないとベンダー(販売業者)への支払ができない」と言い、仕入伝票への押印を改めて要求した。しかし、岩崎さんは、災害時にも「社会インフラ」として営業を求められる加盟店の立場が軽視されていると考え、これを明確に拒否した。

その後、岩崎さんがフライヤー室に入ってホットスナックの調理を行っている間に、本部社員らがレジ横のストアスタンプを無断で使用し、40枚以上の仕入伝票に押印をして帰社した。

(4) 対立と契約解除
岩崎さんが前記の無断押印行為について本部に抗議をすると、本部は、「無断押印などしていない。岩崎さんが納品内容を認め、アルバイト従業員Aさん(仮名)に指示をして押印させた」という趣旨の回答をしてきた。しかし、Aさんは当時シフト外で店舗におらず、実際に一部始終を見ていた別の従業員Bさん(仮名)は、本部社員らが無断でストアスタンプを押して帰ったと述べている。

この件の後、岩崎さんと本部の関係は急速に悪化し、本部は岩崎さんが信頼関係を破壊したとして、「口外禁止条項付きの合意解約に応じなければ、契約違反による解除として1200万円以上の違約金を請求する」と通知をしてきた。岩崎さんがこれに応じない意向を示すと、本部は令和3年11月にFC契約の解除と違約金の請求を行った。

3 独占禁止法違反の申告

以上の経過を踏まえ、岩崎さんは、①加盟店が正確な検品を行えない商品管理システム、②本部社員による納品の無断承認行為、③高額な違約金の設定・請求の3点を、独占禁止法が禁じる「優越的地位の濫用」に当たるとして、公正取引委員会に申告を行い、同日に大阪司法記者クラブで記者会見を行った。会見には多くの報道機関が詰めかけ、セブン-イレブン本部の体質改善を願う岩崎さんの訴えに耳を傾けた。

(代理人弁護士は西念京祐、喜田崇之、清水亮宏、加苅匠、青木克也の5名)

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