民主法律時報

社会保険被保険者資格の「継続」を認めさせて、傷病手当を支給させたケース~パート・有期研に報告した事例から

おおさか労働相談センター 長 岡 佳代子

 ある父親から労働相談が入った。
 「娘がT市のアルバイト保育士で働いているが、難病にかかり検査入院のため、現在2週間の診断書を提出して休んでいる。これまで4年間勤務してきたが、6ヶ月更新で、昨年12月27日~1月5日は雇用が中断している。『1ヶ月以上休んだら首になる可能性がある』と同僚に言われたが、どうしたらよいか。」
 そこで、まずは、本人がT市の自治労連に相談をすること、組合への加入を勧めた。
 しかし、職場の慣例として、アルバイトが長期休業する場合は一旦退職し、回復した時点で新たに採用されているとのことで、組合加入には至らず、結局、6月末で雇い止めになってしまった。
 健康保険に加入しているとのことだったので、退職までの傷病手当金の請求と退職後も傷病手当金請求ができるはずだと伝えた。
 協会けんぽの担当者に電話で問い合わせたところ、「退職後の傷病手当金請求は、継続して1年以上の健康保険加入が条件である。1年以内に中断があれば、傷病手当金は請求できない」との説明を受けた。
 実態として4年間にわたって働いてきたのに不合理だと思い、6月20日のパート・有期研で事例報告をした。河村学弁護士や川西玲子さんから「昨年の臨時国会で共産党の田村議員が自治体非正規職員の社会保険加入資格問題を追求し、厚労省が1月17日に、日本年金機構に対し『厚生年金・健康保険の継続は就労実態に照らして判断し、被保険者資格を喪失させることなく取り扱う』ように通知を出している」との指摘を受けた。
 さっそく、翌日、協会けんぽに電話をして、厚労省からの通知を伝えたうえ、「実態に照らして扱うように」と申し入れたところ、「できない」という返事だった。再度この結果をパート・有期研のメーリングリストに流すと、川西さんから厚労省の通知番号やその文章、「頑張って粘って」とメールでアドバイスを受けた。再び協会けんぽに電話をし、通知番号を示しながら「なぜできないのか」と問い質したところ、「協会けんぽは日本年金機構からのデータをそのまま利用して傷病手当金の処理をしている。日本年金機構で社会保険被保険者資格取得日の変更ができれば、傷病手当金の支給は可能」との回答を得た。
 すぐに天満年金事務所に電話をしたら、承知している様子で「雇用契約書などを持って来てもらえれば、取得日変更は可能です」とのことだった。
 父親に連絡して、「継続して働いている実態があれば、雇い止め後も傷病手当請求は可能なので、近くの年金事務所に雇用契約書を持って行って、社会保険被保険者資格取得日変更をしてもらってから、傷病手当金請求手続きをして下さい」と伝えた。
 数日後、父親からお礼の電話が入った。
 ちなみに、父親からの電話では、「T市からは『アルバイトは傷病手当金請求ができない』と言われていたが、厚労省通知のことを伝えると請求ができるようになった」とのことだった。T市が「アルバイトは傷病手当請求ができない」と言っていたことに私は驚いた。

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