弁護士 西田 陽子
*当連載は、弁護士西田がカウンセリング教室で学んだエッセンスを、法律相談の妖精ココロちゃんとの対話形式でご紹介するものです。
○ココロちゃん(以下「コ」):K先生、こんにちは。ココロといいます。法律相談の技術を磨くために、カウンセリングについて学びにきました。まず、カウンセリングとは何かについて教えてください。
●K先生(以下「K」):カウンセリングという言葉は、人を支援、援助する関わりとして近年広く使われていますが、ここでは、心理的問題を抱えた健常者へ相談援助をすることで、行動変容を試みるものと理解してください。法律相談もカウンセリングの一種といえます。
○コ:上手に相談に乗るためには、どんなことに気をつければいいでしょうか。
●K:どんな相談でも、相談の目的を的確にとらえることを重視しなければなりません。相談者の目的はいくつかあり、この目的を把握できずに対応すると、相談者にとって不満が残り、場合によっては不快感すら与えることがあります。
○コ:相談の分類にはどんなものがありますか。
●K:まず、相談者が受け身である場合として、①指示を求める相談、②他者の意見や考えを求める相談があります。①は、上司等から指示を仰ぐための相談であり、的確な指示を与えることが必要になります。②は最終的な判断を自分で下すために、他者の意見を参考にしたい場合に行われる相談です。
また、③問題原因などの分析を求める相談もあります。法律相談は一般的にはここに入るでしょうね。客観的視点から、理性的に関わることが重要です。
受け身とも少し違うのですが、④状況を整理する目的の相談もあります。相手の話をよく聴いてあげることが必要です。
○コ:法律相談をしていて、相談者に不利な法的な結論を述べると怒られることもあるのですが、そういった相談者は、どういう目的で相談に来ているのでしょうか。
●K:⑤自分の考えについての承認や肯定が目的の相談であった可能性と、⑥話を聴いてもらい理解を求める相談であった可能性がありますね。⑤は、自分なりの考えはあるが自信が持てないときになされるときが多いです。考えがないわけではないので、相手のプライドを傷つけないように配慮する必要があります。⑥は、ある事柄について不安や動揺があり、それを軽減するために、受容的に話を聴いてもらうことを目的とする相談です。意見を述べたり、指導的な対応をしたりすることは不安を増大し、逆効果になることもあります。
○コ:法律相談なので、最終的には法的な見解を述べざるを得ないのですが、どうしたらよいのでしょうか。
●K:相談援助全般に言えることですが、相談の目的を把握するために、まず「傾聴」することが必要です。実際の相談では、①から⑥のいくつかの要素が混ざっていたり、途中で相談の目的が変わってきたりすることもあります。相談の主たる目的を把握し、尊重した後で、法的見解を述べるようにするとよいでしょう。
○コ:確かに、不利な法的見解を言わざるを得ない場合でも、話をしっかり聴いて、相談の目的にかなう対応をしてもらった後であれば、相談者も受け入れやすいと思います。
●K:相談者は、あなたを相談相手に選んだのですから、まずそのことを光栄に思うべきです。そのような態度でいれば、相談者を尊重し、受容的な態度で話を聴くことができると思います。「傾聴」の技法については、次回に詳しく紹介します。
○コ:分かりました。相談者を尊重する態度で法律相談に臨もうと思います。
(第2回へ続く)