弁護士 村田 浩治
この夏、スキマバイトは問題ではないのかという問題関心から「非正規労働者の権利実現全国会議」が作った本が旬報社から出版されました。スキマバイト(スポットワーク)は職業紹介と労務管理がセットとなった「日々職業紹介+直用」という働き方です。このビジネスモデルは2012年に「日雇い派遣」が禁止されたため最大手の工場派遣会社の「フルキャスト」が編み出したいわば「脱法ビジネスモデル」ですが、この形態をスマホアプリを利用する形態で広げたのがタイミーです。2016年創業から一気に増加しタイミーだけで1000万人、業界全体で3400万人が登録している働き方です。
しかし、アンケートではスキマバイト経験者の51%がトラブルを経験し、6割が未解決と回答をしています。そんなトラブルに対処するQ&A、「実態告発ルポ」「労働経済学の観点から拡大の背景を分析する伍賀論文、世界の法規制の動向とあるべき規制を脇田論文で構成されています。
一冊よめば、スキマバイトが派遣法違反の問題をはらんでいるのに広がっていること、その要因が財界とそれを後押しする国の施策の結果であることが分かって貰える本となっています。スキマバイトは、飲食、介護、医療、保育、農業、漁業など人出不足の産業界で本来、公的機関がなすべき紹介事業をアプリ利用者を囲い込む企業の手法で金儲けのための仕組みとして編み出されて広がっているのです。法的問題から背景事情、問題点を理解できる一冊ですので、学習会の材料として多くの会員の皆様に読んでいただきたいと考えご紹介しました。
定価1320円(税込み)ですが、民法協会員の執筆者が9割を超えており、民法協で購入いただければ1100円(送料除く)という特別価格で購入できますので、この機会に購入していただき、活用いただければと考えご紹介します。
(会員執筆者は私の外、脇田滋、伍賀一道、木下秀雄、中村和雄、大西克彦、吉村友香、冨田真平、西川翔大、榧野寛俊)