民主法律時報

《寄稿》《》「統一戦線」あるいは共闘のために留意するべきこと

島根大学名誉教授 遠藤 昇三

異なる理念・思想・考え方を持つ社会的団体・組織(ここでは個人は扱わないが、主張したいことは同じである)が、共同の目的を実現するために協力・協同する場合に留意すべきことを、歴史を踏まえつつ、論じたい。

まず、こうしたことをその戦略的ないしは戦術的路線として提起し追求した共産党の「統一戦線」論の消長を、見ておく。1960年代以降において、共産党は、あらゆる機会を捉えて、「統一戦線」の形成を、他の政党や政治勢力、労働組合、市民団体等に提起していた。例えば、自民党一党政権が強固に継続する中、その政権を打倒し新たな政権を構築するためには、一つの政党では全く不可能だから、「統一戦線」の形成という訴えは、理の当然であり、誰でもが否定できない筋のものであった。ところが、その訴えに賛同するのは、少数派であって、多数派をしめる勢力(例えば、今は存在しない当時野党第1党の社会党、それを支える労働組合=総評)は、共産党との共闘までは否定しないに拘わらず、強烈に反発していた。地方自治体レベルでは、いわゆる革新自治体・首長が、社会党・共産党や労働組合・市民団体等の共闘により、実現されたにも拘わらず、その共闘に参加した団体全てが、それを「統一戦線」と称した訳ではない。それは何故であったろうか。それは、共産党が唱える「統一戦線」とは、共産党支配下の共同「戦線」と理解されていたからであろう。即ち、その結成においては、その構成団体は、対等平等なものであろうが、将来においては共産党の支配が貫徹する、「統一戦線」とはその手段でしかない、従って容易には賛同されないということであったように思われる。あるいは、共産党の側にそこまでの意図はなかったとしても、共産党の組織としての強大さ(社会党を初めとする政党に比較して)またそれが指導していると捉えられる大衆運動の強大さから、「統一戦線」に参加すれば、そのヘゲモニーを掌握される(いわゆる「庇を貸して母屋を取られる」)ことへの危惧があったためであろう。いわゆる革新自治体・首長づくりの共闘の場合、そうした危惧がなかったのであり、従ってそれを「統一戦線」とは称しなかったのである。次に、今「統一戦線」が強調されないことの評価が問題となる。それが、上記のような共産党の「統一戦線」論の問題性の自覚からのその路線の(正面からのではないが)放棄と評価出来るのであれば、それはそれで、(後記する)共闘路線への転換と言える。しかし、そうではない言わばなし崩しの路線転換であるとすると、それまでの路線の反省的総括がないのであるから、その無責任性は、将来の共産党への信頼性を失わせることになる。いずれであるか、共産党は、責任を持って明確にすべきである。

では、現在の課題となっている政権共闘(ここではそれに限定して論ずる)には、どのような問題点なり克服すべき点があるであろうか。まずは、様々な課題による政策共闘と政権共闘との区別を行うことである。政策共闘とは、個別の(あるいは包括的であっても)政策の実現を目的・目標とした一時的共闘であり、現行の政権を前提としている。それに対して、政権共闘とは、現行の政権に取って代わる政権を構築することである。従って、さしあたり衆議院選挙(出来れば参議院も)でその共闘の候補者が、議席の最低限過半数を占めなければならない。それには、政権共闘に参加する政党・政治勢力が、それぞれ言わば勝手に議席を目指し、それらの結果として過半数を占めるということは、ありえない。小選挙区で一人の候補者に絞り、その当選のために政権共闘参加政党等が、最大限努力しなければならない。その上に、比例区についても統一候補者名簿で戦うということも、必要とされよう。そうしたことについての合意を、政権共闘参加政党等で形成しなければならない。

次に、政権共闘における政策的合意の形成である。ここで必要なのは、政権共闘参加政党等のそれぞれの理念・綱領等に固執するのではなく、一致した政権政策を練り上げかつ合意することである(現在においては、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の例えば2020年9月 日の要望書を、出発点にして良いと思われる)。 その上で、政権掌握以後の課題となるが、その政策的合意の実現に向けての誠実な対応が、必要とされる。とりわけ必要とされるのは、実現出来ない政策についての説明責任である。政権政策の全てが実現出来るとは限らないから、実現出来ない要因、責任を明らかにして、今後どうするのかについての明確な説明が、なされる必要がある。その点で、隠蔽・ごまかしといった対応をしてはならないのである。

最後に求められるのは、共闘責任である。即ち、共闘への誠実な対応、(異論を棚上げしているから当然生じうる)対立に基づく共闘解消の危機の克服の努力、そして(やむをえず)共闘から離脱する場合の説明責任及び復帰の条件の明示といったことが、要請される。
いずれにしても、菅政権を打倒する野党政権が早期に実現されることを、期待している。

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