弁護士 榧野 寛俊
1 2025年6月25日、派遣労働問題研究会(以下「研究会」)と大阪労働局需給調整課(以下「当局」)で懇談会を実施しました。この懇談会は継続的に行っているもので、前回2023年11月30日に行って以来の懇談会となりました。今回の懇談会には研究会から11名参加しました。
2 懇談会は、研究会が事前に送付していた質問に当局側が回答した後、質疑応答がなされるという形式で行われました。主な質疑応答は以下のとおりです。
(1)「労働者派遣法40条の8に基づく助言、指導、勧告、公表に関する件数を記載した統計ないし公開できる資料があれば提供されたい。」という質問事項について
当局の回答は、前回までと変わらず、個別に件数は公表しないという回答でした。これに対して、研究会からは、本省にも統計をとって公開するように提言をしてほしいこと、当局としても個別に統計を取って公表して欲しいとの要望を行いました。
(2)「事業報告の際に確認できた事業所ごとにおける均等均衡方式と労使協定方式の件数もしくは割合を教示されたい。」という質問事項について
当局の回答は、2024年6月1日時点で有効な労使協定書の集計結果では、①派遣先均等均衡方式を採用している事業所が7.7%(前年は7.9%)、②労使協定方式を採用している事業所が90.5%(前年は88.8%)、③両方式を併用しているケースが1.8%(前年3.3%)ということでした。
(3)「労働者派遣法49条の3第1項の申告を行った労働者に対して、指導状況等について労働局が行うことができる説明の内容は決められているのか。」という質問事項について
当局の回答は、調査の過程などは指導監督手法を公開することになるので、結論のみの回答としており、全国一律的な運用であるとのことでした。これに対して、研究会からは、直近の最高裁補足意見を踏まえた情報公開の重要性のほか、個々の担当者が法令に即して情報公開についての判断をすべきことを指摘しました。
(4)「スポットワークに関する相談は増えているのか」という質問事項について
当局の回答は、近年増えた業態であり、相談の内容としては、利用制限や、事前に明示された内容と実際の労働条件が違うといった相談があるとのことでした。
3 本年の懇談会は、新たにスポットワークに関する質疑応答も活発に行われ有意義な機会となりました。
一部の質問については前回と同様の回答でしたが、このような継続的な懇談会の実施により、労働局に対して透明性の向上と積極的な情報開示を求め続けることが重要です。定期的な対話を通じて労働局の姿勢を改善させ、労働者の権利保護の実効性を高めるため、研究会としては今後も懇談会の実施を継続していくつもりです。