弁護士 加苅 匠
1 ライドシェア規制緩和反対決議の後に…
2025年2月15日、権利討論集会で「大阪・関西万博の開催に伴うライドシェアの規制緩和に反対する決議」を採択しました。これを大阪市へ執行したところ、大阪市計画調整局より民法協宛に「決議に対する回答が必要ですか?」、「団体協議の場を持ちますか?」と問い合わせがありました。せっかくの機会ですので、2024年4月22日、かねてよりライドシェアについて学習を行っていた独禁研の弁護士を中心に、現役タクシードライバーをしておられる自交総連大阪地連の組合員のみなさんと一緒に、大阪市と団体協議を行ってきました。
2 団体協議の概要
大阪市では、万博期間中に急増する移動需要に対応することを理由に、日本版ライドシェアの24時間常時運行、運行エリアを府内全域へ拡大といった規制緩和が行われています。団体協議では、主に、①万博期間中の移動需要は本当に急増するのか、その対応のために今回の規制緩和は必要なのか、②ライドシェアの安全性確保のために大阪市は何をしているのか、について意見交換を行いました。
①について、大阪市はあくまで万博の来場見込み数を前提に、万博だけでなく府内観光地の周遊や空港との往復といった広域的な移動が必要であるという前提でタクシーの不足数を計算しているとのことでした。しかし、報道のとおり実際の来場者数は想定より大幅に少ないです。また、そもそも今回の万博は自家用車で会場まで行けないためにタクシー需要の増加が予想されたのであって、府内周遊等へのタクシー需要の増加との関係性は不明です。現役ドライバーの組合員からは、コロナ後は府内で深夜帯に開いている店はほとんどなく、24時間運行の需要はないなどといった現場をふまえた意見もありました。万博期間中に必要台数の見直しが行われるとのことで、見込みではなく実態・実数に応じて計算し、不必要にライドシェアを配置することはないよう求めました。
②について、大阪市より「日本版ライドシェアは国が安全対策を踏まえて構築した制度であり、大阪市には権限がなく、特段の制度は設けていない」、「安全運行に向けたノウハウの蓄積は各タクシー事業者において行っている」旨の回答がありました。国の制度であっても、大阪市は旗振り役なのですから、自らが求めたライドシェアが安全に運行されているのかについてしっかり把握すべきです。モニタリング会議や事業者や利用者などへのヒアリングなどできることをとおして安全面での検証をするよう求めました。なお、本題とは逸れますが、ライドシェア全面解禁の危険性や今回の規制緩和をその踏み台としてはならないといったこともしっかりと訴えてきました。
3 感想
大阪市からの回答は役所的ではありましたが、労働組合・団体として懸念していることを直接伝えることができ、またタクシードライバーの生の声を聴いてもらえたことはよい機会であったと思います。現実的には万博におけるライドシェア利用は低調のようですが、今回の規制緩和が全面解禁の踏み台とならないよう、引き続き反対の声を上げ続けたいと思います。