守口市学童保育労組 不当労働行為救済命令申立事件

2019年10月15日

弁護士 愛須 勝也

1 守口市における学童保育の歴史と民間委託

守口市の学童保育は、働く親たちの要望に基づいて「留守家庭児童会事業」として 年前に始まり、市の直営事業として、子どもたちの安心、安全な放課後の居場所を保障する役割を果たしてきた。

ところが、2011年8月に当選した西端勝樹市長(維新)は、民間委託の推進を打ち出し、2016年 月に発表した「第二期改革ビジョン案」では学童保育事業の民間委託が盛り込まれた。これに対して、学童保育の指導員が加入していた守口市職労や、保護者、地域住民が、学習会や宣伝、反対署名などの民間委託反対運動に取り組んだ。市が応募したパブリックコメントには854通もの応募があり、その多くが民間委託に不安の声を寄せ、4万筆を超える反対署名も集まった。

しかしながら、守口市は、2018年7月5日、プロポーザル(公募型企画競争方式)により共立メンテナンス(以下、「会社」という)に優先交渉権を与え、同年8月21日に業務委託契約を締結してしまった(受託期間は5年)。市職労としては、指導員の雇用の確保がされるよう求め、指導員も民間での雇用に大きな不安を抱きながらも、指導員募集に応募して、希望する指導員全員が同社との雇用契約を締結することができた。

2 団体交渉申入れと規約不備を理由とする団交拒否

学童保育で働く指導員は、守口市職労の学童保育指導員分会として組織されていたが、本年3月、臨時総会を開いて規約を改正し、新たに「守口市学童保育指導員労働組合」を結成し、本年4月1日付で団体交渉の申入れを行った。

その後、交渉日程の調整をしていたところ、本年6月になり会社は、日程を白紙撤回し、組合が労働組合として認められるかどうかわからないので、組合規約を送るようにという文書を送付してきた。

組合としては、提出の必要はないと考えたものの、労働条件等に対する組合員の大きな不安もあり、早期に団体交渉を開始することを優先して組合規約を会社に送付した。

これに対して、会社は、同年7月、組合規約が労働組合法に抵触し、適法な労働組合ではないので労組法に基づく規約を検討するようにと回答した。組合は、会社に対して抗議するとともに、早期の団交開催を実現するために、具体的に規約のどこが労組法に抵触するのか明らかにするように求めた。ところが、会社は、「規約の不備については、貴殿においてご検討ください」、「規約の不備を改正されましたら、改めて会社にご提出ください」と回答するのみであった。

3 不当労働行為救済命令申立て

このように、共立メンテナンスとの新たな雇用関係がスタートして5か月経過しても団交が開催されないという異常事態が続いた。この間、組合員の抱く不安は解消されないまま、会社により、自主的な活動に対する干渉や、年度途中の異常な配転の強行など問題が噴出していた。

そこで、組合は、2019年9月11日、大阪府労働委員会に、団交応諾とポストノーティスを求めて救済命令の申立を行った(第1回調査期日は10月17日)。

共立メンテナンスは、2016年にも、当時、東大阪市で受託した学童保育事業に関して、組合(東大阪労連、東大阪市職労、東大阪市ちびっ子クラブ指導員労働組合)から団交を申入れられたのに対して、組合側の出席者を3名以内とする等の不当な条件を提示するなどしたことで救済命令の申立を受け、同年11月に府労委において和解が成立しているが、今回も、懲りずに不当労働行為を行っており、同社のコンプライアンス、さらには同社と業務委託契約を締結した守口市の責任が問われる。

4 全国に蔓延する民間委託

共立メンテナンスは、「PKP事業」(Public Kyoritu Partnership)と称する行政事務の包括的民間委託の手法を全国の自治体に売り込んでいる。同社のホームページを見ると、全国120の地方公共団体から受託を受け、その業務は、図書館、給食調理、保育業務、学校内業務など広範囲に及ぶ。また、臨時・嘱託等の非正規職員の雇用問題の解決と行政サービスの質の向上とコスト削減などが掲げられており、政府・総務省が推進する会計年度任用職員への移行に乗じて事業への参入を狙っている。そこには住民福祉や住民サービスの視点はなく、自治体も公的責任を放棄して、住民サービスを根こそぎ丸投げしている。ただ、東大阪では共立メンテナンスは1年で撤退しているし、また他社の事例になるが、静岡県島田市でも、市の嘱託員・臨時職員が担っている業務を対象に段階的に民間会社に包括委託する方針が打ち出されていたが、自治労連、自治労連弁護団の現地調査等の結果、阻止したという例もある。本件でも早期に団体交渉を実現させ、民間委託による公的責任の放棄に歯止めをかけるたたかいとしなければならない。

(弁護団は、谷真介、佐久間ひろみと当職)