民主法律時報

第2回労働相談懇談会「退職トラブルの相談」に参加して

おおさか労働相談センター 中平 和明

 5月17日(木)に、国労大阪会館で第2回労働相談懇談会が開催され、産別2組織、地域9組織、職対連から26名の参加があった。

主催者あいさつの後、西川大史弁護士から「最近の労働裁判に見られる特徴」について、事例をもとに説明をしていただいた。特徴的な点では、労働契約法20条に関する事例で、通勤手当や住宅手当などを正社員には支給しているが、派遣社員など正社員以外の従業員には支給されていないなど、不合理な差別に対する訴訟が多くみられた。雇止め問題では、裁判で撤回させるというのはなかなかきびしい状況であるものの、国立研究開発法人理化学研究所の職場に見られるように、団体交渉で無期転換権を勝ち取るケースもあり、安易に司法の判断に頼らず労働組合の交渉力を高め、自ら解決していくことがより一層求められるようになってくるのだと思う。そのことが、労働組合をより大きくしていくことにつながっていくのではないか。

学習会では「退職トラブルの相談について」と題して、中西基弁護士を講師に学習と意見交換を行った。まず、はじめに「退職とは」について話があった。辞職の意思表示をして、それが使用者に到達した時点で効力を生じるので、それ以降は撤回することができないなど、気分感情だけで簡単に「退職」などと発言することは、やめるべきだということがよく分かった。

二つ目の「退職の自由」については、憲法18条で退職の自由が保障されているということ。無期契約の場合、退職を申し出てから二週間を過ぎれば雇用契約が解約される、法的に退職したことを理由に訴えられることはないなど、労働者には退職の自由があることを詳しく話していただいた。しかし有期雇用の場合、やむを得ない場合を除いて、契約期間中の退職はできないなど、無期雇用と有期雇用では大きな差があることも分かった。しかし、逆にみれば、使用者側は有期雇用者に対して契約期間中は解雇できないが、労働者側は退職を願い出て会社が認めた場合や就業規則および労働契約次第で辞職できるなど、若干事情が違っていることも分かった。

「よくあるトラブル相談」では、相談センターの相談にもよく見られる「退職したいが会社が辞めさせてくれない」ケースの対応についても話があった。退職の意思表示をする場合「退職願」は会社の合意を求めたもので、会社が認めない場合退職がむずかしいこと。何月何日で辞めると決めたら必ず「退職届」を提出することなど、辞職の意思表示を明確にすればトラブルも少なくなるなど詳しく話していただいた。

また、退職したが最後の給料を振り込んでくれないで「欲しかったら会社にとりに来い」と言われたというケース。この件についても民法484条で書かれているように、お金を払う側が持っていくのが大原則で、就業規則などに特段の定めの無い限り、従来の支払方法に基づくことが分かった。

この学習会を終えて、労働相談を受ける側の構えとして、どのような退職なのか、どのような雇用形態なのか、など本人に関する情報を正確に聞き取る必要があることが分かった。また、単に退職の相談だからこうしたほうがいいよ、ああしたほうがいいよというだけでは、よけいに当事者が不安になってしまうかもしれないなと感じた。当事者の不安をどれだけ取り除くことができるか、どう労働組合の値打ちを語れるか、相談される側の力量が問われることになる。

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