闘い取った判例に反する 地方公務員法改正

2017年07月15日

官製ワーキングプア研究会 川西 玲子

1 地方公務員法改正で「会計年度任用職員」という身分を創設

地公法・地方自治法の改正は、全国 万人の臨時・非常勤の永年の悲願であった。法の谷間からの脱却、不安定な身分、均等待遇からの置き去りを改善させるためには法改正は必然であった。しかし残念ながら無残な結果となった。現行の臨時・非常勤を新たに創設した「会計年度任用職員」という身分に移行させるという。そもそも総務省が苦肉の策でひねり出した「会計年度任用職員」とはいかに実態とかい離している代物か。また公務非正規の「雇止め」と「手当支給」の貴重な判例の到達にいかに反しているのか今回の法改正を考えてみる。

2 「雇止め」――「中野区非常勤保育士事件」のような判決をさせないための改「正」

中野区非常勤保育士再任用拒否事件(東京高裁)では、私法上の解雇権乱用法理は認められなかったが、「解雇権乱用法理を類推すべき程度にまで、違法性が強い」と認定し期待権を認め、報酬の1年間分に相当する慰謝料を認めた。その上で、「公法上の任用関係にある労働者が私法上の雇用契約に比して不利となることは確かに不合理」「反復継続して任用されてきた非常勤に関する公法上の任用関係においても実質的に即応した法の整備が必要」とした。しかし今回の法改正は、法の整備どころか、二度とこのような判決が出ないようにするための念の入れ方である。身分の呼称に「会計年度」「任用」といれ、その上これまでは非常勤には期限の規定がなかったが、「上限1年」と法に明記した。更に「条件付き採用」とし再度任用された場合でもそのたびに試用期間1ケ月をつける。これでもかと期待権を持たせない意図がみえみえである。労働契約法が適用除外のため、必要なら何度でも任用できる(しかし更新ではない新たな任用)、いらなくなればいつでも雇止めできる(解雇ではない期間満了)、入口規制も出口規制もない。民間でこのような雇用をすればブラックと呼ばれることは間違いない。

さらに問題なのは現在22万人いる特別職非常勤職員の労働基本権が一方的に奪われることだ。雇止めはストを配置したり、労働委員会を活用して闘ってきたが、これまでの労働協約は無効となり労働組合を解散して制限の多い職員団体を結成することになる。代償措置として人事委員会や公平委員会が活用できるとされているが、人事委員会がこれまで非正規の賃金について具体的に勧告している実績は皆無である。また、公平委員会が「再度の任用がされるはずだとする雇止め問題」を扱うのか大いに疑問である。再度の任用をしないことは行政処分ではないとして審査請求は対象外とはねつけられる可能性は大きい。改正法で雇止めの撤回どころか期待権すらさらに厳しい状況におかれることは間違いない。

3 「手当支給」――枚方市・東村山市判決に明確に反する

現行の地方自治法における非常勤職員(一般職非常勤職員)への手当支給は判例では「常勤職員の勤務時間の4分の3以上勤務」ないしは「勤務の内容、態様あるいはその役割、また待遇等の取り扱いなどの諸事情を総合的に考慮して」条例化で支給可能となっている。しかし今回の法改正によると「会計年度任用職員」については勤務時間4分の3に関係なく「フル(週38時間45分)」と「パート(週38時間45分未満)」に分けパート職員には期末手当以外は支給しないと地方自治法に明記して今後の権利を奪った。厳密にいえばフルタイムより1分でも少なければ期末手当以外は支給できないとなる。しかしこの間判例に沿って、フルタイムでなくても勤勉手当や退職手当など人材確保のために条例・規則・要綱等整備して処遇改善に努力してきた自治体もある。現状の到達を引き下げることは許されない。法改正に先立ち設置された研究会報告(総務省)では「民間や国家公務員との制度的な均衡を図る観点から、まずは常勤職員と同様に給料及び手当の支給対象とするよう給付体系を見直す立法的な対応を検討すべき」と結論を出した。しかし土壇場になってフルとパートで大きな格差をつける法案となって出てきた。現状でも正規と職務内容に違いがないにも関わらず勤務時間を10~15分ほど少なくして手当支給を免れてきた実態がある。今回の改正ではさらに非正規の間での格差を容認することになる。また、判例に反するばかりでなく「同一労働同一賃金」ガイドラインや、パート労働法8条、労働契約法 条にも抵触する。

4 身分移管を機に民間委託の推進 も

そもそも「会計年度任用職員」とは会計年度内で処理できる業務につく職員と考えるのが当たり前だが、その名前と実態は大きくかい離している。総務省調査(平成28年)で10年以上同一人を繰り返し任用しているのは保育士では41%、給食調理員では31%、消費生活相談員では32%の自治体があることがわかった。人材不足の折から、どこの自治体でも募集しても人が集まらないと頭を抱えている。総務省は臨時・非常勤の身分移管の際には、現に存在する職を漫然と存続させるのではなく、民間委託の推進など、簡素で効率的な行政を実現せよと要請している。

今回の法改正が働き方改革の公務員版と言われるように安上がりの非正規の活用とパブリック分野での企業の利潤追求が狙われていることは明らかだ。
法の施行は平成32年4月、これからは闘いの場は国会から自治体に移る。今年も第5回「なくそう! 官製ワーキングプア」大阪集会を9月23日(祝)にエル・おおさかで開催する(午前分科会・午後全体会)。民法協にも共催団体になっていただいており、大いに学び、交流し元気を蓄えて闘いに備える集会にしたい。たくさんのご参加をお待ちしています。