民主法律時報

憲法学から見た集団的自衛権――集団的自衛権連続研究会第2回・森英樹先生の報告

弁護士 宮 本 亜 紀

1 連続研究会の開催

民法協、自由法曹団大阪支部、青法協大阪支部、大阪弁護士9条の会が共催で、著名な学者を講師に、集団的自衛権の連続研究会を企画しました。第2回目は、憲法学の森英樹先生(名古屋大学名誉教授)を迎えて、2014年10月6日に北浜ビジネス会館にて行いました。
第1回は、前号ニュースにて報告した通り、国際法学の松井芳郎先生で、国連体制を改めて学び、権利と義務をすり替えるなど倒錯した議論をする7.1閣議決定が、現代国際法学で制約された自衛権の必要性と均衡性の要件に欠けるという理論展開を学びました。そして、「日本国憲法の『初心』に立ち戻るべき」という結びに力を得ました。

2 森英樹先生の講義と討論

第2回森先生の講演は、松井先生の結びを継いで、憲法9条の意味を改めて確認するところから始まりました。私は特に、「武力による威嚇」禁止により「抑止力」さえ否定しているという言葉に目を開かされました。そして、下記の引用文を再度噛みしめることで、不戦の誓いである憲法に自信を持とうと思いました。
「しかしみなさんは、けっしてこころぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことほど強いものはありません。」(文部省『あたらしい憲法のはなし』1947年)
「9条2項で『戦力を保持しない』としていることに対しては、攻められたらどうするのかという『問い』が反9条の側から出されます。攻められることはない、絶対安全という論証はできません。絶対安全という論証ができないことを国是とし、それほどの決心を求めたのが9条です。他国から攻められることのない、外交をはじめその前提をみたす努力を要求しているのが9条なのです。」(樋口陽一・赤旗2014年9月18日)
また、7.1閣議決定は、「非戦闘地域・後方支援」という限定をやめて「戦闘現場」という概念を創設したと指摘され、安保条約5条が集団的自衛権を含むとの学説を紹介されたことで、講演後の討論が盛り上がりました。

3 憲法講師活動の中で

現在の憲法の危機においては、9条の解釈や自衛隊の存在については様々な考えがあるとしても、「今そこにある戦争の危機」に対処するために一致点で広く共同することが必要だとは思います。私は、憲法講師として集団的自衛権を説明する際には、「個別的自衛権の範囲で対応可能」と力説しても、9条の根本的精神を語ることに力が入らず、不全感がありました。しかし、森先生が結びとして「腹をくくって9条完全実施を国民として求めていく」と言われたことで、私自身の軸を通すべきことに気付きました。
この連続研究会の内容を活かし、民法協の弁護士としても、憲法講師活動を引き続き展開し、諸団体と協力して行動したいと思います。

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