民主法律時報

街頭宣伝の自由確立をめざす各界懇談会(街宣懇)第2回総会・学習会

弁護士 南 部 秀一郎

 2013年5月27日、街宣懇の第2回総会・学習会が、国労大阪会館中会議室で開かれ、日頃から街宣活動を行っている労働組合員の方々をはじめとする、43名の方が参加されました。
 会は、まず、街宣懇代表委員の川辺和宏大阪労連議長のあいさつから始まりました。続いて、学習会に移り、関西学院大学法学部の長岡徹教授から、「政治活動規制条例と国公法弾圧事件最高裁判決」をテーマに、お話し頂きました。

 街宣懇が、今回の学習会のテーマに、この「国公法弾圧事件最高裁判決」を掲げたのは、この判決が昨年  月に出た、公務員の政治活動に関する最新の最高裁判決であるのと同時に、大阪市で、維新の会を中心とする勢力が、いわゆる「2条例」制定に続き、「政治活動規制条例」を制定したところにあります。この政治活動規制条例は、大阪市職員に対し、同条例が定める「政治的行為」を制限するものですが、この「政治的行為」は国公法及び人事院規則が定める、国家公務員の禁止される「政治活動」とほぼ同等のものです。したがって、ここ大阪でも、この国公法に基づく弾圧に対する画期的な内容を含む最高裁判決について学習することで、公務員の政治活動を制限させないということにつながります。

 長岡教授は、今回の学習会のお話で、国公法弾圧事件判決について、「公務員の政治的中立性」という言葉が判決中から消えており、公務員の政治活動を正面から認めたものであると評価されました。長岡教授は、国家公務員の政治活動の自由について、先例とされてきた1974年の猿払事件の判決では、①「公務員にも政治活動の自由がある」と一言も言っていないこと、②「行政の中立性」だけでなく「公務員の政治的中立性」を要求していることを、指摘されました。すなわち、国公法の政治的行為の禁止は、憲法  条の表現の自由を制限するもので、国民一般に及べば憲法違反になるが、公務員には「全体の奉仕者」であり政治活動の自由はなく、「行政の中立性」確保の目的から「公務員の政治的中立性」が維持されることは国民の重要な利益であり、それを損なう恐れのある政治的行為の禁止は合憲との判断を、猿払事件判決は述べていると説明されました。

 しかし、国公法弾圧事件では、上記①、②の点が覆され、結果、国公法違反について、「公務員の政治的中立性」の観念的抽象的危険では足りず、現実的実質的危険を構成要件要素としたものである。長岡先生はそう指摘されました。これはつまり、国公法違反を認定するには、単に公務員が禁止される行為を行ったとの形式判断では足りず、様々な事情から実質的に判断を行わないといけないことになり、適用の範囲を狭めることになります。

 最後に、公務員労組の選挙運動が、「現実的実質的危険のある行為」にあたるかについては事案に即して判断されるべきものであり、これから運動で「あたらないこと」を勝ち取るべきと話を締めくくられました。

 会は長岡教授の話に続いて、自治労連の小山国治氏から、政治活動規制条例の下、苦労して組合活動を行われている状況が報告されました。また、2012年度の街宣懇の活動が報告され、干渉事例の紹介が行われたのち、来年度の活動方針について採択されました。
 2013年は、7月の参議院選挙もあり、いよいよ改憲の危機が足下に迫る状況で、反原発から大衆運動も広がりを見せ、言論、ひいては街頭宣伝活動にも、締め付けが迫ることが考えられます。街宣懇の活動により、街宣の自由、言論の自由を守ることができますよう、協力をお願いいたします。

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