「韓国の労働運動」学習会に参加して

2012年03月28日

 弁護士  中 村 里 香

 3月19日、エルおおさかにて、韓国の社会情勢、労働情勢にも造詣の深い脇田滋教授(龍谷大学)を講師にお迎えし、「世界の民主化運動に学ぶシリーズ」第3回として「韓国の労働運動」と題する学習会が開催された。

1 はじめに
 リーマンショックイヤーである08年度についても、日本の労働損失日数(ストライキにより労働が失われた日数)は1万1000日であり、韓国の80万9000日とは大きな開きがある。韓国の労働者数は日本の約3分の1であるから、韓国では日本の200倍規模の労働争議が行われているといえる。学ぶべきは、まずはこの活発さであろう。

2 韓国の労働運動の歴史
(1)韓国では、87年の民主主義革命以降、大企業労働者を中心に、労働者大闘争が勃発した。この闘争においては、全国で3341件の争議に120万人の労働者(正規労働者の3分の1)が参加し、労働争議に量的変化がもたらされた。
 この民主労組運動は、自然発生的・非組織的な運動から、企業を超えた組織的な連帯に結びついていった。

(2)90年には、全国労働組合協議会(全労協)が結成され、600余の労組、22万名の組合員が組織化された。基本原則としては、民主制・連帯性などが掲げられ、組織戦略としては、産別労組の建設が明確に掲げられた。
 ただ、90年代には、盧泰愚政権下での激しい弾圧により、労働運動は大きく萎縮した。

(3)
93年、金泳三大統領による文民政権が成立した。
 金政権は、労働運動弾圧とは一線を画したものの、日本をモデルとした規制緩和に乗り出し、「世界化」を標榜するなど新自由主義路線を掲げ、「社会的合意」(経営側に親和的な労組が、低賃金などの労働条件を容認・合意すること)を通じた労使関係形成などの政策を取った。
 96年12月、金政権は、整理解雇の法制化や派遣勤労の合法化を盛り込んだ労働法改悪を強行した。これに対し、95年に結成されたばかりの民主労総は、直ちに大規模なゼネストを行い、これを機に、守勢になっていた労働運動が再び高揚し、労組が主導する大衆的政治闘争が幕を開けた。

(4)
金大中政権下では、親資本的労働政策が導入され、労働市場の柔軟化により、非正規労働者が急増、製造業では雇用が減少し、「雇用なき成長」の時代に突入した。
 98年には、韓国の経済成長率はマイナス5.8%、失業率は7%となり、整理解雇による大量失業が社会問題化するとともに、貧困と格差が表面化し、社会的に構造化していった。同時期には、非正規のみならず、大企業労働者を含む正規労働者も大規模リストラにさらされており、日本とは違った様相を呈している。
 同時期には、非正規の闘いも、個別抗争から組織的闘争へと発展していった。
 例えば、金属労組は非正規労働対策として、事業場内非正規職の組織化と、総雇用保障による非正規職優先解雇反対を明確に掲げた。「派遣切り」を容認してきた日本の大企業労組とは対照的といえる。

(5)
03年からの盧武鉉政権下では、非正規労働者保護が掲げられた。06年11月には、派遣勤労者保護法の改正、期間制・短時間勤労者法及び労働委員会法の制定が行われ、「非正規職保護法制」が固められた。これにより、出口規制として、非正規労働者の2年経過時の正規職転換(みなし雇用)が定められたほか、非正規労働者の差別是正(賃金その他の勤労条件などにおける合理的な理由のない差別を禁止)が明文化された。
 とはいえ、現実には、正規・非正規間で2倍程度の賃金格差が存在する。また、労働委員会での差別是正事件についても、07年からの4年間で2294件の申立てのうち、認定されたのは133件に留まっており、実効的に機能しているとは言い難い。この理由としては、差別是正には非正規労働者本人による申立てが必要とされていること、労組が代理人になれないことなどが考えられる。
 なお、2年経過時のみなし雇用については、政府雇用労働部調査(11年)によれば、6割から7割が正規や長期雇用に転換される一方、期間制勤労者136万人のうち雇止めされたのは2.35%に留まっており、非正規職保護法による正規職転換効果が明確となっている。

3 韓国大法院判例について
 韓国大法院は、偽装請負で働いていた労働者について、派遣先との間に当初から労働契約関係があることを認定したインサイトコリア事件(03年)を初め、違法派遣にも直接雇用みなし規定の適用があるとした現代自動車事件(12年)など、画期的な判決を連発している。
 このような中、金属労組は「社内下請正規職化大闘争」に乗り出し、不法派遣集団訴訟(原告は8企業12事業所の2679名)など、大規模な法廷闘争も行っている。

4 おわりに
 韓国では、活発な市民・社会運動と、労組によるによる労働運動が連帯し、ともに反貧困や総雇用保障を掲げて活発に活動している。また、産別・業種別組織化志向など、日本に比して、労働者間の分断がさほどみられない点に特色があるように思われた。
 韓国の労働運動の歴史や、韓国の活発な労働運動の一端を知ることができ、有意義な学習会であった。4月8日からの韓国視察旅行で、現場の生の声が聞けるのが楽しみです。