民主法律時報

過労死連絡会 新人ガイダンス報告

弁護士 吉留  慧

1 はじめに
2020年3月11日、本年度の過労死連絡会新人ガイダンスが開催されました。コロナウィルスの影響が心配されたため、参加者は念入りな手洗い・アルコール消毒をし、万全の対策のもと開催となりました。

2 ご遺族のお話
ガイダンスの第1部では、弟様を過労自死によって亡くされた遺族の方のお話を聞かせていただきました。詳しく記載することはできませんが、遺族本人から聞くお話は、基本書や裁判例のみからは到底読み取ることのできない、過労自死の酷さ、遺族の辛さ、悔しさ、家族の死から立ち直ることの困難さを痛感しました。特に、遺族の方の「修羅道に入ったような生活」という言葉は、特に印象的でした。

また、過労自死については、勤務先の会社に問題が有るわけではなく、社会全体の構造的な問題があるということも知ることができました。
さらに、あまり見ることのできない、実際の事件の中で代理人が提出した意見書、会社の再発防止策策定義務・口頭による謝罪を盛り込んだ画期的な和解案も実際に見せていただき、大変貴重な機会となりました。

最後に、遺族の方から、弁護士という職業は、どん底にいる依頼者の生きていく道を照らし、お亡くなりになった方の誇りすら取り戻すことのできる職業だと思います、と激励のお言葉をいただき、今後はより一層依頼者の方の言葉に耳を傾けるよう決意を新たにすることができました。

3 認定基準
ガイダンスの第2部では、岩城穣弁護士より精神障害の認定基準について、上出恭子弁護士により、脳・心臓疾患の認定基準について講義をしていただきました。

お二人の先生には、認定基準の変遷の歴史、ターニングポイントとなった事件についても併せてご教示いただきました。現在から考えれば当時の認定基準の不適切さは明白であるにも関わらず、認定基準の改訂には数十年の年月と、遺族・弁護士の不断の努力があったことを知りました。

また、認定基準については、認定基準の詳しい解説、過労死・過労自死事件を受任する際の留意点等、実務に即した形でご講演いただきました。短い時間のなかではありましたが、労災申請の際の提出書類の書き方、書類作成の注意等細かな点までお話いただきました。非常にわかりやすくご解説いただき、実務経験の乏しい私にも、実務のイメージを掴むことができる内容でした。

 今回のガイダンスでは内容が盛り沢山であったこともあり、証拠収集の方法や、裁判における立証活動の点までは話が及びませんでした。それらの点については、今後の勉強会において取り扱われる予定となっています。

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