NTT西日本が通信労組に謝罪 団交拒否で最高裁

2011年06月27日

 

弁護士 河 村 武 信


  1.  去る5月23日、最高裁は、通信労組に対する団交拒否事件で、会社の不当労働行為責任を認めた中労委命令について、会社の上告を受理しない旨を決定。同命令は確定し、NTT西日本は、この6月13日、通信労組委員長に対し、謝罪文を交付した。謝罪の内容は、
    「当社が、①「NTTグループ3か年経営計画(2001~2003年度)」に基づく構造改革に伴う退職・再雇用制度の導入等に関する貴組合との団体交渉において、貴組合に対する提案、並びに貴組合の求める資料の提示及び説明において、合理的な理由がないにもかかわらず他の労働組合(NTT労働組合)と比べて取扱に差異を設け、団体交渉期日の設定及び団体交渉における説明・協議において誠実性を欠く対応をし、上記退職・再雇用制度の導入に伴う意向確認(という名の退職勧奨)を貴組合との誠実な協議を行わずに実施に移したこと、②(意向確認手続が終了して、配転対象者となりうる「60歳満了型」労働者の約7割が通信労組組合員であることが判明した後)、貴組合が平成14年2月5日付で申し入れた組合員の勤務地等に関する団体交渉において、本人の希望を尊重した配置を行うなどの配転の実施方針に関する団体交渉に応じなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると中央労働委員会において認められました。
    今後このような行為を繰り返さないようにいたします。」( )内は引用者註記。
    というものであり、会社は山田委員長の前に深々と頭を下げた。
  2.  この命令が最高裁によって支持されたことは大変重要な意義がある。著明な日産自動車事件(団交拒否)の最高裁の判断の流れをくむと同時に、併存する組合に対する平等取扱義務は単に形式的平等では足らず、実質的に平等な取扱を求める趣旨であることを確定的に明らかにしたと評価できるであろうと思われる。注目したいのは、最大多数派であるNTT労組との経営協議会における提示資料や説明内容が、その後の同労組との団体交渉における会社の説明や、協議の基礎となっているとした上で、必要な限りで、通信労組に同様の資料や説明を行う必要があるとする判断を、最高裁も容認した点にそれがよく表れている。いま一つは、最高裁もまた、配転、とくに組織的なそれについて、配転の基準・理由、要件及び手続などの実施方針について、事前に組合からの協議に応じ、説明する義務のあることを認めたことである。
  3.  この命令が確定するまで10年の歳月を要した。
    この団交拒否事件は、当初、平成14年(2002年)3月に、大阪地方労働委員会(現府労委)に対して団交拒否救済申立をなし、平成18年2月、初審命令を得たが、一部の救済に止まり、また不当な事実認定と不足極まる救済内容であった。そのため、双方から中労委に対し再審査申立がなされ、申立組合としてはほぼ満足すべき中労委命令を得たところであった。NTTは、この命令について取消訴訟を東京地方裁判所に提起したが、東京地裁は中労委命令を維持し、東京高裁もまたこれを支持し、遂に平成23年に至って、上告不受理決定によって命令は確定するに至った。実に、この間約10年という歳月を費して、ようやく労委命令が確定するという、お定まりと言えばそうであるが、不当労働行為の、しかも団体交渉の在り方をめぐる紛争として、かくも長期間を要することについて、労働者、労働組合の権利救済システムの貧困さを思わざるをえない事案である。労働者、労働組合の権利救済制度がいかに不備であるか。勝利の判断を喜びながらも、この不条理を正していく努力が、制度面も含めて改めて検討される要がある。尤も、極めて不充分であった大阪府労委命令、それを変更して優れた中労委命令を得る過程で、会社の団交拒否の姿勢を徐々に改めさせることに通信労組は成功しつつあったが、それでも、11万人合理化計画が、労働者の犠牲の上で展開される過程を阻むことには及ばなかった。
    会社の構造改革に伴う退職・再雇用制度導入の意図が、真に、全従業員の前に明らかにされ尽くしたら、様相は異なったろう。全労働者の「同意」のもとにリストラを進める手法として、多数派組合と会社の癒着とその組合員の沈黙を破った少数組合の奮闘は、NTT労組を利用した会社の労務政策(組合員支配)に、一定の風穴を開けていたのであるから。
  4.  会社のリストラ施策が、不当労働行為を介在させて進行されることは、これまでの労働運動史のなかでよくあることとして明白である。ただ、団交拒否という名の不当労働行為は、何よりも情報を労働者に伝えない。教えない。――ひいて、それはものごとについての正しい判断力を労働者から奪い取るという意味で、明らさまな暴力的な不当労働行為と勝るとも劣らない不法な所為であることが改めて知られる。もう一度謝罪文の内容をみるに、それはまさに労働者の労働条件についての、知る権利を蹂躙するものであることが判然とする。
    団交拒否は、極めて現代的な労働者支配の形態であり、それは団結権そのものの弱体化、破壊につながる。
    中労委命令を支持した最高裁の判断が、労働常識となるよう奮闘しよう。