津田電気計器継続雇用裁判 大阪高裁でも勝訴

2011年04月27日

弁護士 谷  真介

  1. はじめに

     昨年9月30日に大阪地裁において勝訴したJMIU大阪地本傘下の津田電気計器支部書記長の岡田茂さんの高年法継続雇用裁判が、平成23年3月25日、大阪高裁でも原審の結論を維持して勝訴した(残念ながら会社より上告され確定せず)。この種の事案で高裁レベルで全国で初めて地位確認請求が認められたものであり、その意義は少なくないので、報告する。

  2. 制度及び事案の概要

     改正高年法9条は、年金支の給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられるに応じ、65歳未満の定年を定めている事業主に対して、①定年の延長、②継続雇用制度、③定年制の廃止のいずれかの措置を講じることを義務付けた。この改正の趣旨は、年金制度の改悪に伴って労働者の生活が破綻せぬよう、雇用生活と年金生活の間に空白を埋めることにある。本件は、岡田さんが改正高年法に基づいて会社が導入した「継続雇用制度」による雇用継続を申し入れたところ、会社が過去の組合活動を嫌悪して恣意的に低い査定をした上で、岡田さんが会社の継続雇用制度の基準をクリアしていないとして、継続雇用を拒否されたという事案である。
     裁判上の争点は、①本件継続雇用制度の導入手続が高年法9条2項、附則5条に違反しないか、②本件継続雇用制度の継続雇用者選定基準が高年法9条2項に違反しないか、③岡田さんが本件継続雇用の選別基準をクリアしていたか(会社の査定が正当か)、④③がクリアしていたとして岡田さんと会社との間に労働契約が成立しているといえるか、などであり、その中心的な争点は③及び④である。
     会社の継続雇用制度の選別基準は、(簡略化していうと)Cを0点とするA~Eまでの5段階査定によって、総合計点が0点以上であれば継続雇用するというものであった。岡田さんは直近1年の査定において、プラス査定であるB評価が3項目(+6点)あるものの、マイナス査定であるD評価が5項目(-10点)あり、懲戒実績としてさらに-2点され、総合計点は-4点(-6点となるはずであるかなぜか-4点)というものであった。

  3. 大阪地裁判決

     昨年9月30日の大阪地裁判決は、会社がD評価と査定した5項目のうち2項目は誤りでC評価とされるべきとし、また懲戒実績は存在せず-2点は0点とされるべきとした上で、さらに表彰実績があるにもかかわらずそれをプラスしていないのは誤りであるとして(表彰実績は+5点となる)、岡田さんは合計+7点であったとして会社の継続雇用制度の選別基準をクリアしていると判断した(なお原告は査定に関しては立証責任が会社に課されるべきだと主張したところ、地裁判決は、査定の立証については会社と労働者がそれぞれ行うものであるが、査定に関しては会社が独占しているため査定を濫用したものと解される場合が多いという一般的判断を示した)。
     その上で、法的構成としては、会社が就業規則により継続雇用制度を策定し労働者に周知したことが再雇用の申込にあたり、その継続雇用制度の選別基準をクリアした労働者が継続雇用の希望をしたことが再雇用契約の承諾にあたるとした。そして本件でも再雇用契約が成立しているとして岡田さんの地位確認及び賃金請求を認めたのである。

  4. 大阪高裁判決

     地裁判決を不服として会社が控訴したところ、大阪高裁では第1回期日で結審し、その後の和解でも会社が一歩も譲らなかったため判決がなされることとなった。
     判決では、まず法的構成について地裁判決の枠組みから変更する判断を行った。すなわち、会社が就業規則により継続雇用制度を策定し労働者に周知したとしても、その後の労働条件については交渉等が行われて決定されるのであるからこれをもって労働契約の申込とは考えられず申込の誘引にすぎない。そして、労働者の継続雇用の希望が申込にあたり、それに対して会社が継続雇用する旨の意思表示が承諾にあたるとした。もっとも、その会社の承諾は会社の完全な裁量によるものではなく、継続雇用制度の選別条件を満たした労働者が継続雇用を希望(申込)したのに対して会社が不承諾とした場合には、解雇権濫用法理を類推適用され、その不承諾は権利濫用となるという枠組みを示した。その上で、査定について会社の側で把握しているものであるから、労働者が選別基準を満たしていないことについては会社が主張立証責任を負うとした。この高裁判決が示した枠組みについては、地裁判決とは異なるものの、結論としては地裁判決と差異は出ないと考えられる。逆に選別基準をクリアしているかどうかについて査定の立証責任を使用者に課している点では、評価できるものと考える。
     しかし高裁判決は、実際の岡田さんの査定のあてはめにおいて、会社の査定を丸飲みするかのような事実認定を行った。すなわち、会社のなしたD評価のうち2項目をC評価と改めた地裁判決を覆し、会社の評価どおりすべてのD評価を維持した(B評価が3項目あるため合計-4点)。もっとも地裁判決と同様に懲戒実績(-2点)についてはこれを認めず、会社が評価からはずした表彰実績(+5点)を認めたため、合計+1点であるとして、結論としては岡田さんは選別基準をクリアしていると判断した。岡田さんは表彰実績があったためギリギリ救われた、という結論となったのである。いくら一般論として選別基準に関して会社に立証責任があるとされても、実際の査定についてこのように会社の行った査定を丸飲みした判断がなされれば、結局会社はいくらでも恣意的な査定や継続雇用拒否を行うことが可能となる。この点については、多いに問題のある判決であるといえる。

  5. 最後に

     本件裁判の意義は、高齢者の雇用の確保を図るという改正高年法の趣旨を使用者に守らせ組合活動その他を理由とする差別・選別を許さないことにあり、本件で高裁判決においても結論として達成できたことは大変嬉しいことであった。もっとも、本件は上告され、岡田さんの職場復帰は未だ達成できていない。さらに本件を提訴した後、他2名の組合員も岡田さん同様に継続雇用を拒否されて、労働委員会や裁判で争っている(予定含む)。会社に高齢者の雇用について責任を果たさせるためには、まだまだこれから正念場を迎える。最終解決まで組合員らとともに全力を尽くしたい。

(弁護団は鎌田幸夫、谷真介、中村里香)