民主法律時報

Q:政治活動を理由に減給?

Q 条例案では、政治活動を行った職員に対して減給すると定めていますが、地方公務員の政治活動はどのように規制されているのでしょうか。減給することは相当なのでしょうか。

A:公立学校教職員の政治活動については、教育公務員特例法により、国家公務員法と同じ範囲の政治的行為が禁止されています。国家公務員法102条1項によって禁止され、刑事罰の対象とされている国家公務員の「政治的行為」の内容は、「政党又は政治的目的のために、寄付金その他の利益を求め、若しくは受領」する行為だけで、それ以外には「人事院規則で定める政治的行為」をしてはならないとして、その具体的内容は人事院規則に委任されているのです。それが人事院規則14-7です。人事院規則14-7は、「政治的目的」をもってなされる「政治的行為」を禁止し、「政治的目的」の定義(同規則5項)として、「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること」など8項目を列挙し、「政治的行為」(同規則6項)については17項目にもおよぶ包括的・網羅的なものとなっています。
 そもそも、政治活動の自由は、市民が主権者として、政治的意思・思想を形成し、国の統治過程に参画するもので、議会制民主主義の根幹的基礎ともいうべきものであり、憲法21条により保障されています。そして、教職員にも、市民として、とりわけ公務を離れた私的な市民生活の場において政治的思想と意見を自由に表現し、活動する自由を保障しています。もっとも、教職員の政治的中立性及びそれに対する国民の信頼を確保するために、教職員の政治活動の自由は上記のような制約を受けています。
 しかし、教職員の政治的中立性を確保するという目的のために、上記のように広範な制約をすることには大きな問題があります。教職員も、勤務時間外は一人の市民でもあるため、公務外の市民生活の場における私的な行動にまで政治的中立性を要請する必要はなく、勤務時間外に政治活動を行っても公務の政治的中立性を害することはありません。それにもかかわらず、教職員であること及び政治的中立性を理由に、政治活動を一律制限することは、憲法21条が保障する政治活動の自由を侵害するものであり許されません。
 東京高裁平成22年3月29日判決も、国家公務員である厚生労働事務官が休日に政党機関紙等を配布した行為についてではありますが、公務員という立場を離れ、職務とは全く無関係に、休日に、私人の立場で個人的に行われた行為については、行政の中立的運営及びそれに対する国民の信頼が損なわれる危険があるということは常識的に見て困難であると述べています。
 以上のとおり、内容の如何を問わず、教職員が政治活動を行ったことを理由に減給することは、憲法上問題があるといえます。

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