民主法律時報

Q:「民」主体の社会のための公務員制度改革とは?

Q:大阪維新の会は、「民」主体の社会のための公務員制度改革と称して、条例案を提出すると説明していますが、どのような政策理念に基づくものでしょうか。

A:条例案は、前文で、都市間競争を勝ち抜くための新たな地域経営モデルに即応できる新たな公務員制度を確立し、「民」主体の社会を実現するために、公務員が地域の「民」のため全力を尽くす、優れた行政機関にすることを条例制定の目的と説明しています。
 しかし、地方公共団体は、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法1条の2第1項)という役割を有しています。地方公務員は、そのような地方公共団体の役割を果たすことが求められているはずです。条例案のいうように、他の地方公共団体と競争するものでもないし、まして他の地方公共団体を蹴落として、自らが勝ち抜くという事態は、住民の福祉の増進とはまったく無縁のものではないでしょうか。
 条例案は、全体として、首長がすすめる政策に共感する人物を民間から幹部職員に登用し、一般の職員に対しては、職務命令で縛り付け、「嫌ならやめろ」と恫喝するという構造になっています。このような職場で、公務員は、住民の福祉の増進を図るために自主的に行政事務にとりくむことができるでしょうか。
 しかも、橋下府知事や大阪維新の会は、関西財界と一体となって、大型公共事業を継続する一方で、「市場化テスト」などの手法を通じて、公務サービスを「民間開放」し、大企業の儲けの場にしようとすすめています。「民」主体といいながら、そこでいう「民」は「住民」ではなく、「民間企業」のために全力を尽くすのが公務員というのですから、憲法や地方公務員法の想定する公務員像とはまったくかけ離れているというほかありません。
 住民一人ひとりの権利が保障された地方公共団体の運営にとって、職員基本条例案は「百害あって一利なし」のものというべきです。

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