決議・声明・意見書

声明

「核共有」の提言に反対し撤回を求める声明

 ロシアによるウクライナへの侵略をめぐり、日本維新の会は、2022年3月3日、「ロシアによるウクライナ侵略に関する緊急提言」を政府に提出した。提言には、自衛力の見直し、防衛費の増額(当面の目標:GDP比2%)などの軍拡とともに、「ロシアが核による威嚇という暴挙に出てきた深刻な事態を直視し、核共有(ニュークリア・シェアリング)による防衛力強化等に関する議論を開始する」ことが盛り込まれている。

また、安倍晋三元首相からも核共有の議論を開始すべきとの提起がなされ、それを発端として、自民党の一部の議員からも核共有の議論を容認すべきとの意見が出てきている。

 核共有は、アメリカが同盟国にある米軍基地に核兵器を置き、共同で核を管理、運用する仕組みである。核共有が実現すれば、在日米軍基地に核兵器が配備されることをあからさまに認めることになり、非核三原則を真っ向から否定するものである。

軍拡競争を進め、核の力に対して核で対抗することであり、国民を核戦争に導くものである。その発想が極めて危険であることは論を俟たず、世界的な緊張が生ずることは必至であり、行き着く先は人類の滅亡である。日本はこれまでアメリカに加担して隣国に対して脅威を与え続けてきたが、核共有となれば、さらなる緊張を生み、武力衝突の危険を増大させることになる。それは再び戦争の惨禍が起こることのないよう決意した日本国憲法前文の精神や、力の論理を否定し紛争の平和的解決を求めた国連憲章および日本国憲法9条の精神にも反する。

 ロシアによるウクライナへの侵略は、核兵器に物を言わせた国際平和の破壊、大量殺戮であり、全世界からロシアの侵略行為や核兵器による威嚇に対して抗議が相次いでいる。世界中の国民が求めるのは国際平和であり、核兵器による対抗ではない。

ロシアのウクライナ侵略によって市民の尊い命や安全が奪われる中、ウクライナ侵略に便乗した核武装論は断じて容認することができない。

 核兵器の脅威をなくすためには、核兵器の廃絶しかない。核兵器禁止条約が発効して1年が経つが、現在までに同条約を批准した国は59カ国に達しており、核兵器のない世界を目指す声が強まっている。

日本が今なすべきことは、核共有の議論を開始することではない。核兵器禁止条約に参加し、全世界に対して核兵器の廃絶を呼びかけるとともに、日本国憲法の精神を広めて、核兵器による負の連鎖から抜け出すよう世界に働きかけることである。

 核共有の議論を開始することは、国際平和を希求し、核兵器の廃絶を求める全世界の国民の声に逆行するものである。唯一の被爆国であり非核三原則を国是とする日本で核共有について議論するなど言語道断である。

民主法律協会は、日本維新の会や一部の国会議員らによる核共有の議論開始の提言に対して強く抗議し撤回を求めるとともに、ロシアによるウクライナへの侵略に便乗した核共有の提言に反対する。

2022年3月7日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令

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