決議・声明・意見書

声明

看護師の日雇い派遣を可能とする改正政令案に反対する緊急声明


現在、政府は、「社会福祉施設等への看護師の日雇派遣」を可能とするよう、労働者派遣法施行令(昭和 61年政令第 95 号)(以下単に「政令」という)の改正を検討している。

政府は、同政令の改正を行う必要性として、社会福祉施設等における看護師の人材確保の必要性を挙げる。

確かに現在、新型コロナウィルス感染拡大の影響による医療体制の逼迫により、看護師の人手は不足している。他方、資格を持ちながら看護師として就労していない「潜在看護師」も一定数存在する。このような人手不足を解消するために人材を確保する必要性があることは否定できないが、その解決方法が日雇い派遣の解禁であるということは断じてない。

そもそも、このような事態が生じている原因は、かねてから看護師が過酷な労働環境に置かれ、他方でそれに見合った待遇を受けていないことにある。そして、新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、看護師が置かれている労働環境はさらに悪化している状況にある。したがって、人材を確保し人手不足を解消するために行うべきは、何よりも、社会福祉施設等における看護師の労働環境・待遇の改善である。


日雇い派遣は、間接雇用であるとともに雇用期間の短さから、雇用管理責任の所在が不明確になり、労災保険の不加入、様々な名目での違法な賃金控除などの法違反が横行し、さらには労働災害を招くなど弊害が多く、労働者の待遇悪化を招いたため、労働者保護のために原則禁止されたものである。加えて、現行の社会福祉施設等における看護師の労働者派遣は、「指揮命令系統が不明確」等の雇用管理上の課題や、「利用者にかかる情報収集が不十分」、「起こりやすい医療事故等について、十分把握できていない」等の医療安全管理上の課題が指摘されるなど(厚生労働省「福祉及び介護施設における看護師の日雇派遣に関するニーズ等の実態調査集計結果」(令和2年))、医療・福祉現場では日雇い派遣では問題がある旨認識されている。

このような懸念が示される中で、社会福祉施設等における看護師業務について日雇い派遣を解禁すれば、さらなる労働環境・待遇の悪化を招くことは必至である。さらに、新型コロナウィルス感染症が拡大する中で、看護師は職場で感染リスクにもさらされるため、仮に感染した場合には速やかに労災補償を受けることが必要であるが、雇用管理責任の所在が不明確となり、速やかな労災補償にも支障を来しかねない。本来、派遣先にも課せられる感染予防措置等の安全配慮義務の所在も不明確となる危険がある。

個々の労働者の家庭環境等に合わせた勤務時間・勤務形態にすることは直接雇用でも十分可能であるだけでなく、むしろ安定した無期の直接雇用の方が個々の労働者に配慮した取扱いを行いやすい。あえて間接雇用に、しかも「究極の非正規雇用」ともいわれる不安定な日雇い派遣にする必要性は全くない。

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そもそも、社会福祉施設における看護師は、医療的な視点での支援や介護、保育を提供するだけではなく、利用者に寄り添いながら信頼関係を構築し、利用者の個別性を尊重したケアを行うこと、そして他の職種と連携しチームケアを行うことが重要である。このような利用者との信頼関係の構築、個別性を尊重したチームケアを行うためには、看護師の継続的な長期雇用が必要不可欠である。短期間かつ間接雇用である日雇い派遣でこれらのケアを行うことは不可能である。これは、上記厚生労働省調査結果において、回答した事業所のうち過半数が短期看護派遣職員に対する懸念として「労働期間が短期であるため、チームでの役割を発揮しにくい」を挙げているところからも明らかである。日雇い派遣が解禁されれば、社会福祉施設等の利用者に対するサービスの低下につながることは必至である。

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以上のとおり、社会福祉施設等における看護師の人材確保のために行うべきは労働環境・待遇の改善、そのための介護報酬の引上げ等であり、同看護師業務についての日雇い派遣の解禁は、むしろ労働環境・待遇の悪化を招き、看護師の生命健康を危険に晒すとともに、利用者に対するサービスの低下にもつながるものであるため、当協会はこれに強く反対する。

 

2021年3月2日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令

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