決議・声明・意見書

決議

安倍政権による労働法制改悪を許さず、労働政策決定プロセスの形骸化に反対する決議

 安倍政権は、昨年4月3日、「労働基準法等の一部を改正する法律案」(以下「労基法改正案」という。)を閣議決定し国会に提出した。継続審議となり迎えた本年の通常国会では、自公政権が7月の参院選への影響をおそれたためか審議すらされなかったが、参院選後、秋の臨時国会での成立が狙われている。また、同政権は、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を設置し、2015年10月末より、「解雇の金銭解決制度」導入へ本格的に動き出し、2017年通常国会での法案提出を目論んでいる。

 労基法改正案には、「企画業務型裁量労働制」の拡大等と「高度プロフェッショナル制度」の創設が盛り込まれている。裁量労働制は、労働時間管理がおろそかになり、長時間労働が放置されたり、実際には労働者が十分に裁量的な働き方をしていないにもかかわらず残業代節約のため制度が悪用されることがある。同法案では、広範な一般労働者が裁量労働法制の対象とされるおそれがあり、弊害は一層拡大する。

また、「高度プロフェッショナル制度」では、対象労働者が合法的に残業代ゼロで際限のない長時間労働を強いられることになる。健康管理措置の導入と実施が要件とされているが、十分とはいえず、現実に遵守されるとは限らない。しかも,対象業務は省令で規定するとされているから,政府の一存でいくらでも拡大される危険がある。年収要件(平均年収の3倍を上回る金額を省令で定める)についても、制度がひとたび導入されれば法律を改変して際限なく引き下げられる危険性が大きい。
上記各制度は、労働者の健康保護と自由時間の確保のための「1日8時間・週40時間」規制を排除し、歯止めのない長時間労働・深夜労働を野放しにさせ、「残業代ゼロ」を合法化しようとするものに他ならない。

 「解雇の金銭解決制度」は、解雇が違法無効の判決が確定し場合であっても、使用者が、一定の金銭を支払うことにより雇用関係を終了させ、労働者を放逐することを可能にする制度である。

現行法下でも、労働者が希望すれば解決金等の支払いによる和解や調停が可能であり、労働者が選択する金銭解決制度は既に存在しており、現段階で制度導入の必要性は全くない。また、労働者側からの申し出のみを認めるとしても、一律に一定額の金銭支払いを制度化することは事案に応じた当事者の納得のできる適正な解決を困難とし、むしろ、現在の解決水準を押し下げる危険性さえある。

「解雇の金銭解決制度」の導入は、合理的な理由がなくとも、一定額の金銭さえ支払えば解雇できるという風潮を生み出しかねず、安易な解雇を誘発するおそれが極めて強い。これでは、長年の労働者の権利闘争によって形成されてきた解雇権濫用法理は事実上無に帰し、解雇規制そのものを根底から覆すことに途を開くものである。

 これら安倍政権の雇用破壊政策は、産業競争力会議や規制改革会議など財界代表を中心に労働者代表を入れない会議で政策をまとめ、それを閣議決定し、ほとんど固まった後に労政審の手続きを踏むというやり方をとってきた。

安倍政権は、こうした労働政策決定プロセスにおける「労働者代表はずし」を、より一層進めようとしている。

本年8月3日、安倍首相は、加藤勝信一億総活躍担当相を「働き方改革担当相」に任命した。長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現を挙げて、「働き方改革担当相」のもとに「働き方改革実現会議」を開き、年度内をめどに実行計画をまとめたいと述べた(同日の記者会見)。

しかし、これらの労働政策は、本来、公労使の三者構成による労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)の審議・答申に基づいて行われるべきものである。公労使の三者構成による政策決定プロセスは、ILO(国際労働機関)などのように国際標準でもある。しかるに、安倍政権は、敢えて労働政策審議会を外したものである。これは、労働者代表の声を聞かずに、財界にとって都合の良い政策を強行することを目的としたものであるというほかなく、断じて容認することはできない。

 民主法律協会は、労基法改正案における労働時間法制の改悪、「解雇の金銭解決制度」といった労働法制改悪を許さず、また、安倍政権が狙う公労使の三者構成による労働政策決定プロセスの形骸化に反対する。

以上、決議する。

2016年8月27日
民主法律協会 第61回定期総会

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