民主法律時報

裁判・府労委委員会 判決命令検討会の報告

弁護士 原野 早知子

 裁判・府労委委員会では、敗訴した判決や労働委員会命令について、当該弁護団から報告を受けての検討会を行っている。2021年4月は、6日にリクルートスタッフィング交通費事件の一審判決(報告は河村学弁護士)、20日に関西大学事件の府労委命令(報告は須井康雄弁護士)を取り上げた。(民法協事務所とZOOMのハイブリッドで開催)

リクルートスタッフィング事件は、派遣労働者に交通費が支給されないのは、労契約法20条違反であると訴えた事案である。最高裁を含めたこれまでの裁判例では、交通費支給の趣旨は通勤費の補填であり、この点は有期労働者も無期労働者も変わるところはないので、勝利すべき事案と思われる。ところが、大阪地裁(中山裁判長)は、「交通費支給は正社員には居所の変更を伴う配転があるから」という使用者側の主張を追認して請求を棄却してしまった(判決は2021年2月25日)。検討会では、河村弁護士から詳細な解説があり、事実認定・法律論双方について、判決の問題点をよく理解することが出来た。

関西大学事件は、系列の中高一貫校で、積極的に組合活動を行っていた教諭が、生徒への対応を理由に普通解雇された事案である。団交拒否や組合役員を懲戒委員会の委員から解任したことが不当労働行為とされる一方、解雇自体は不当労働行為に当たらないとされた(府労委命令は2020年8月31日)。解雇の理由が組合嫌悪であることを、どのように主張立証するかが課題である。並行して提訴した訴訟が、一審の尋問を控えているということもあり、事実関係や今後の争い方について、活発な質問・意見が出た。

判決命令検討会は、比較的少人数で疑問や意見を出し合い、当該弁護団と一緒に怒ったり落ち込んだりするとともに、時には、当該弁護団に色々言ってしまうという取組であり、参加者にとっては自分の担当する事件の参考にもなる。大阪地裁の中山コートでは、労働者勝訴の判決が極めて少ないのが実態であり、判決の批判的検討が引き続き必要と考えている。今後も定期的に開催するので、興味を持たれた方はぜひご参加ください。

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