民主法律時報

堺学童指導員継続雇用拒否事件の 中労委不当命令について

弁護士 冨田 真平

 堺学童保育指導員労働組合が、学童保育の管理運営業務を新たに受託した株式会社CLCが、組合員である主任指導員について、組合員であることを理由に継続雇用を拒否したとして、不当労働行為救済申立を行った事件について、2020年10月9日、中央労働委員会第1部会は、不当にも再審査申立を棄却する命令を出した。

 長年公益財団法人であるスポーツ振興事業団に管理運営業務が委託されてきた堺市の放課後児童対策事業(のびのびルーム事業)について、2017年度からいわゆるプロポーザル制度が採用され、民間会社である株式会社CLC(以下「CLC」という)が堺市東区ののびのびルームの管理運営受託事業者に選定された。すると、当初から、のびのびルームで働く指導員については指導員が希望すれば継続雇用されることが前提になっていたにもかかわらず、組合の執行員でありかつその中のルーム(以下「本件ルーム」という)の一つで主任指導員として仕事をしていた指導員1名が継続雇用を拒否された。これについて、組合員であることを理由とする継続雇用拒否であり不利益取扱い(労組法7条1号)に該当するとして(また、この件について団交申し入れを行ったにもかかわらず「使用者でない」として団交を拒否したことが正当な理由のない団交拒否に該当するとして)、大阪府労働委員会に不当労働行為救済申立を行ったのが本件である。

 大阪府労委では、継続雇用拒否された組合員及びCLCの担当者の審問が行われたが、2019年1月8日に、団交拒否のみならず、不利益取扱いについても単に使用者性がないとして、その他の判断(不当労働行為意思の判断や採用拒否について労組法7条1号が適用されるか等についての判断)に全く立ち入らず、申立を棄却する不当な命令が出された。これに対し、組合は再審査申立を行い、中労委での審理が行われることとなった。

中労委では、CLCに継続雇用された他の指導員、CLCの代表者、堺市の担当者の審問の申請を行い、他の指導員の審問が行われ(代表者と堺市の担当者の申請は却下された)、CLCに雇用される経過として当該指導員については面談すらなく電話での意思確認のみで採用が決まっていた実態が明らかとなり、実質的な採用行為が無く指導員が希望すれば継続雇用されていたことがより一層明らかとなった。また、中労委は、労組法7条1号該当性については、使用者性を独立した論点から外す争点整理もなされ、一定の前進ある命令が期待された。

 しかし、冒頭でも述べたとおり、中労委は、CLCが指導員の雇用を承継することになっていたとはいえず、また継続雇用の拒否が組合員であることの故をもって行われたと認めるに足りる証拠もないとして、労組法7条1号該当性を否定し、また近い将来労働契約関係が成立する可能性が現実的、具体的に存しないとして使用者性も否定し、労組法7条2号該当性も否定した。

中労委命令は、不当労働行為意思について、府労委の最終盤で提出した、情報公開で入手した、CLCの代表者の「労働組合関係者を同席させるような人物なら面談しない」との労働組合への強い嫌悪を示す発言が記載されている堺市が作成した報告書について全く触れず、さらに代表者や堺市の担当者の証人申請を却下しながら、これを認めるに足りる証拠がないとして認定しなかった。この点は極めて不当であるといえる。

また、中労委命令は、実質的な雇用の承継についても、審問で明らかとなった、電話での意思確認のみで雇用されるなど指導員が希望すれば雇用されることが前提でありCLCの実質的な選考は予定されていなかったという実態などに触れず、単に他の指導員について形式的な面接が行われていること等を理由にCLCの選考行為があったとし、また雇用の承継についての契約がないことなどを理由に実質的な雇用の承継を否定した。この点も、実態に基づかない極めて形式的な判断であり、不当であると言わざるを得ない。

 今回のような継続雇用拒否がまかりとおれば、運営事業者の交代の度に指導員の雇用が不安定となり、そこで働く指導員のみならず、子どもや保護者へも大きな悪影響が出ることになる。組合・弁護団としては、今後東京地裁での取消訴訟の提起を検討しており、学童指導員の雇用の安定と充実した保育の実現のため、今後も一丸となって闘い抜く所存である。今後もより一層の支援をお願いしたい。

(弁護団は、豊川義明、村田浩治、中筋利朗各弁護士と冨田)

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