民主法律時報

イチから学ぶ!「労働組合」を活用して 職場を変える 学習会

弁護士 喜田 崇之

第1 はじめに

2020年9月16日午後7時から、『イチから学ぶ!「労働組合」を活用して職場を変える』と題して、民法協と労働社会保障研究会の共催で、学習会を開催したので報告する。

第2 学習会の趣旨・内容

1 労働組合の意義等について

本学習会では、ヤマハ英語講師ユニオンの結成や、その他の労働組合結成に携わる清水亮宏弁護士から、労働組合の意義・活用方法・作り方等について、解説をしてもらった。

本学習会の趣旨の一つ目は、昨今のヤマハ英語講師ユニオンの活躍に代表されるように、個人事業主とされている方々が労働組合を結成し、使用者側と団体交渉を重ねるなどして成果を勝ち取られている情勢に鑑み、個人事業主の方々や職場に労働組合がない方々等を念頭に、労働組合の意義・活用方法、労働組合の作り方の基本的な内容を学び、労働組合を活用して職場を変えることができるという認識を持っていただくということだった。

2 ヤマハ英語講師ユニオンの事例
次に、ヤマハ英語講師ユニオンの清水ひとみ執行委員長から、なぜユニオンを結成することを決めたのか、どのような活動を行ってきたのか等について、当事者の率直な気持ちを交えてお話してもらった。労基署で自分たちが労働者ではないと言われたことの疑問から出発し、現在、組合員数が約160名にまで成長した。

結成までの過程で、労働組合に対する間違った誤解を持っていた仲間がいたが、弁護士や他の組合活動家の方々の説明等により、正しい認識を得ることができた話があった。また、組合活動の内容や議論状況が組合員全員に見えるように全て公表してきたことなどが、組合員数が増え、活動が充実している要因ではないかという話もあり、既存の労働組合の方からも参考になったという感想が聞かれた。

3 労働者性をめぐる世界情勢
最後に、脇田滋先生から、労働組合活動や、労働者性をめぐる世界情勢等を交えて、整理してもらった。

カリフォルニア州では、2019年「誤分類」防止法が制定され、企業側が使用する方が個人事業主と主張するためには、①労働提供者が会社の支配や指揮命令から自由であること、②労働提供者が会社の通常の業務過程とは別に仕事を完成すること、③労働提供者が取引・職業又は業務において独立していること、の3点を全て証明する必要があるという内容の法律が制定されたことが紹介された(立証ができなければ、当然、労働者として扱われる)。これは、2018年4月に、州最高裁で同趣旨の判決が下されたことによるものであった。

また、同州では、検察が、違法な誤分類をしている会社(労働者性があるにもかかわらず個人事業主として使用している会社)に対し、違法な誤分類の差し止めの仮処分申請が行われていることも紹介された。その趣旨は、「労働者を個人事業主に誤分類することは、使用者として負担すべき最低賃金、失業保険料などの費用を労働者や納税者全体に不当に負わせる」というもので、日本では考えられないことであるが、理屈はなるほどと思わせるものであった。

また、韓国でも、名ばかり個人事業主とされてきた方々が労働組合を結成し、様々な業界(映画業界等)で勤労基準法(日本の労基法に当たる法律)の適用があることを勝ち取っていることも紹介された。

脇田先生の報告から、世界では、産業別の労働組合が大きく躍進し、様々な成果を勝ち取る運動を展開していること、労働組合が業界を「代表」するものではなければならないこと、判例や法律に囚われることなく要求をぶつけていくことの重要性を痛感させられた。

第3 最後に

ヤマハ英語講師ユニオンの活動のように、弁護士が、労働組合を活用して職場を変えるという選択肢を提案できるようにしなければならない。本学習会を通じて、さらにその運動・呼びかけを強めていきたいと考えている。

なお、労働社会保障研究会(まだ、仮称)とは、労働問題・貧困問題・社会保障問題等を連帯して学び、運動を構築するためにどうすればよいのか等を議論し学ぶ弁護士・社会保障学者らの私的なグループのことで、今後も、学習会・研究会の企画等を行っていきたいと考えている。

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