派遣法40条の6をめぐる 労働法研究会を開催

2020年09月15日

弁護士 須井 康雄

 2020年8月1日、派遣法40条の6による直接雇用申込みみなし制度をめぐる2つの判例を題材として労働法研究会が開かれた。新型コロナウィルス感染防止に配慮して、会議アプリzoomを利用した初の試みだった。報道機関関係者も含め、普段は参加できない人も参加できた。参加者は、遠隔参加者も含め30名程度だった。私もzoomを利用して遠隔参加した。

2015年10月、違法派遣や偽装請負の場合に、発注元・派遣先が労働者に対し直接雇用を申し込んだとみなす派遣法40条の6が施行された。同規定に基づく直接雇用関係の確認を求めた裁判がいくつか起こされ、そのうち、2020年3月13日には神戸地裁で東リ事件の判決が、2020年7月20日には名古屋地裁で日検事件の判決が出た。いずれも直接雇用申込みみなし制度の適用を否定した。

労働法研究会では、東リ事件を担当した村田浩治弁護士と日検事件を担当した増田尚弁護士から報告がなされたのち、萬井隆令教授に基調報告いただき、参加者による議論が行われた。

東リ事件は、東リ伊丹工場で巾木工程に就労していた労働者が偽装請負であるとして、東リに対し、直接雇用関係にあることの確認を求めた事案である。判決は、そもそも偽装請負を認めなかった。労働者派遣・偽装請負とはなにか、その判断要素の「指示命令」とは何かを突き詰めたうえで、実際の就労状況が偽装請負であったことを明確にさせる必要があるとされた。

 

日検事件は、使用者が偽装請負を労働者派遣契約に切り替える措置を採っていたが、先行する労働委員会の手続でもそのことを開示せず、後に開示した時点では、労働者派遣契約への切替時より1年が経過していたので、派遣法40条の6の2項により申込が撤回され、直接雇用契約は成立しなかったと主張された事案である。名古屋地裁は、偽装請負であったことや脱法目的は認めたが、1年の期間徒過により直接雇用契約は成立しないと判断した。

萬井教授は、偽装請負、労働者供給、違法派遣と適法な派遣などの関係を整理され、日検事件判決は、労働者の合意を不可欠の要素とする派遣の基本的構造についての理解を欠くとの考えを示された。また、罪刑法定主義との関係で認定が慎重になりがちな労働者供給と違法派遣とを区別する解釈についても示唆された。さらに、派遣法40条の6の解釈も示され、直接雇用申込みみなし制度の法的性質から、「承諾」の態様は、実情に即し労働契約締結の意思が就労先に伝わるようなものであれば足りるとの考えを示された。

派遣労働者の粘り強い運動の中から生まれた直接雇用申込みみなし規定は、多くの点が解釈に委ねられている。判例が初めて出たばかりのなかで、理論的な検討を深める貴重な良い機会になった。テレビ画面では議論を深めにくい面もあるとの声も出たが、参加しやすいとの声も多かった。遠隔会議システムの便利さと、対面と変わらぬ議論が両立するような研究会になるよう、引き続き楽しみにしている。