民主法律時報

守口学童指導員雇止め事件、集団提訴

弁護士 原野 早知子

 2020年5月15日、3月末に雇止めされた守口市の学童保育指導員10名が、株式会社共立メンテナンス(以下「共立」)を相手取り大阪地裁に集団提訴した。労働者としての地位確認、賃金(月例給与・賞与)支払、損害賠償(慰謝料・弁護士費用)を請求している。

 守口市は、直営していた学童保育事業の運営を、2019年4月から共立に委託した。

市は民間委託に当たり、「学童保育の質を維持する」、「指導員の継続雇用を確保する」と方針を説明し、共立は、指導員の継続雇用を確保すると表明して、受託業者に選定された(受託期間は5年間である)。

原告らは、市直営時代から、非常勤嘱託職員などとして長年(7年~35年半)勤務をしており、民間委託にともない共立の契約社員となった。原告らは、今までどおり継続して働き続けられるとの合理的期待をもって、共立と雇用契約をした。

ところが、たった1年後、共立は大量の雇止めを行った。

 守口市と共立は「学童保育の内容を変えない」としていた。しかし、実際には共立が市直営時と異なる対応や指示をすることが、しばしば発生し、これに対し、原告らは疑問や意見を述べていた。共立はこれを嫌悪し、「反抗した」、「抗議した」などとして原告らを雇止めした。

市全体の指導員88名中13名を雇止めした結果、現場は大混乱に陥った。子どもが学童保育に行きたくないと言い出し、保護者の不信感も募っている。ところが、共立は、「経験不問」で求人を出し、給食調理員(守口市の小学校給食も受託している)を応援に行かせる無茶苦茶な状況である。

共立は、まともにものを言う労働者を嫌悪する余り、学童保育の中心となるベテラン指導員を排除してしまったもので、雇止めは理不尽、無効である。

 本件には前段がある。組合は、共立の労働者となった2019年4月以降、共立に団体交渉を何度も要求したが、共立は「労働組合として資格が無い」との理由で団交拒否を続けた。労働委員会に救済申立されても、第2回以降期日に出席しない対応を取り、2020年4月20日付けで、労働委員会から、不当労働行為と認定され、団交応諾とポストノーティスを命じられた。ポストノーティスが命令されるのは異例であり、共立の不当労働行為の悪質さを際立たせるものであった。(共立は救済命令に従わず、中労委に再審査申立を行い、団交拒否をつづけている。)

雇止めされた指導員13名中、原告らを含む12名が守口市学童保育指導員労働組合の組合員だった。また、原告 名中5名が組合役員である。共立は、労働組合活動を嫌悪し、組合を弱体化させるために組合員を大量に雇止めしたことは明らかであり、雇止めは不当労働行為である。

 新型コロナ危機で小学校が休校し、学童保育は子ども達の受け皿となっている。

原告らは、感染防止対策や、指導員が安心して勤務を続けられる労働条件を、組合を通じ要求していた。共立は、現場の労働者の意見を尊重して、コロナ危機に対処すべき立場にあったが、労働組合の声に一切耳を傾けることなく雇止めを強行した。

今回の事件は、守口市が学童保育事業を無責任に民営化したことから始まっている。市は現在も、事業の実施者であるが、共立の行為に対し、指導を行おうとしない。民営化により、指導員はより不安定な立場に置かれたのであり、守口市の責任も重大である。

この裁判は、共立の違法を訴えると同時に、学童保育の民営化と守口市の姿勢を問い直す意味を持つものである。(共立は、東大阪市でも団交拒否の不当労働行為を行っていた。民営化ではこのような業者を排除することが出来ない。利益追求に馴染まない公益性の高い事業を民間委託することの問題が、再考されねばならない。)

 提訴はテレビ・新聞で大きく報道され、社会の関心は大きい。今後、勝利のために、裁判所の中での闘いと、世論に訴える運動がともに重要である。一日も早く原告の皆さんが子ども達の元へ戻れるよう、弁護団も力を尽くす所存である。

(弁護団は城塚健之・原野早知子・愛須勝也・谷真介・佐久間ひろみ)

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