民主法律時報

大阪市職員アンケート問題プロジェクトチームの活動について~実態調査報告書作成と大阪市への要望書提出~

事務局長 増 田   尚

 ご承知のとおり、橋下徹大阪市長は、2月10日から16日にかけて、任期付職員、再任用職員、非常勤嘱託職員、臨時的任用職員、消防局職員を除く全職員に対し、「労使関係に関する職員のアンケート調査」(以下、「本件調査」といいます。)を実施しました。本件調査の質問項目には、街頭演説等の政治活動への参加や投票依頼の有無など、個人の政治活動の内容や、労働組合活動への参加や加入の有無などを確認し、組合に加入するメリットや、加入しない(脱退する)ことの不利益などを感じているかなどまでも尋ねるものであり、職員の思想・良心の自由を蹂躙し、自主的な労働組合の活動に介入する不当労働行為というべきものでした。

  民法協では、本件調査の実施を知り、2月11日・12日の土日に緊急の会合を開き、この問題でのプロジェクトチームを立ち上げ、アンケートへの回答を強制されている職員に対し、本件調査の違法性を明らかにして、回答する義務のないことを伝え、アンケートに応じないよう呼びかけること、提出しなかった職員に対する懲戒処分を許さないよう、職員と市民への理解を広げ、橋下市長らの暴挙に対する抗議の声を集中させるようとりくむことを確認しました。
 13日(月)には、さっそく、会長声明を発表し、同日朝の通勤時間帯に、市労組とともに市役所前で宣伝を行い、ビラや会長声明を配布しました。市労組は、大阪労連などとともに各区役所前でもビラを配布しました。また、民法協のウェブサイトに、「『労使関係に関する職員のアンケート調査』の問題点」のページを設けて、アンケートの設問項目ごとに問題点を解説しました。当該ページは、ツイッターやフェイスブックなどで拡散され、問題意識の乏しいマスメディアに代わって、広く市民に本件調査の問題点を伝えることに役立ったと自負しています。
 こうしたとりくみが、多数の労組、弁護士会、市民団体の抗議の声ととともに、アンケートの集計作業を凍結させ、大阪市労連の申立てに対する大阪府労委の実効確保措置勧告と相俟って、さらには、データの破棄へと追い込む力となりました。
  他方で、橋下市長も野村顧問も、違憲・違法の本件調査を反省することなく、職員や労働組合に謝罪をしていません。こうした無反省な態度が、5月に全職員に対する入れ墨の有無を調査し、回答をしなかった職員に対し、昇進させないなどの不利益処遇や、懲戒処分をほのめかすなど、人権無視の職員管理につながっています。

  プロジェクトチームは、橋下市長が実施した本件調査による異常な人権侵害の実態を記録化するために、7回にわたり13名の職員からヒアリングを行いました。このたび、その結果を報告書にとりまとめました。ヒアリングからは、本件調査が職員の内心を踏みにじり、自由な政治活動や労働組合活動を萎縮させ、職員間や労働組合に対する相互不信を植え付けて、「物言わぬ」職場づくりをねらうものであったことが浮き彫りになると同時に、こうした暴挙に抵抗する職員、市労組の活動が多くの職員を励まし、人間性を回復する力になっていることを認識することができました。
 また、5月23日には、大阪市に対し、この報告書とともに、①全職員及び各職員組合に対する謝罪、②回答・非回答のデータの削除、③非回答を理由とする不利益取扱いの禁止、④労働組合との信頼回復を求める要望書を提出しました。大阪市では、所管の人事室において、要望への対応を検討するとしています。
 橋下市長は、7月市議会にも、職員の政治活動を刑事罰で禁止する条例案や、職員団体の自主的な運営に介入する条例案など、憲法、地方公務員法などを無視して、異論を許さない市役所へと変質させようと躍起になっています。同様の違法行為を繰り返させないためにも、市長に謝罪をさせ、被害回復をさせることが不可欠であり、そのためにも様々な手段によって、引き続き市長の責任を追及することが求められています。
   ◇
 なお、プロジェクトチームがとりまとめた実態調査報告書は、「労働法律旬報」6月上旬号に掲載されます。同号は、「橋下政治に対する批判的検討―公務員労働組合問題を中心に」との特集が組まれており、萬井隆令会長の巻頭言や、西谷敏教授、城塚健之幹事長、谷真介会員、市労組の中山直和さんと当職など、民法協からも多数の会員が執筆を担当しており、自治労・市労連の活動を含む、大阪市における職員や労働組合の権利闘争が取り上げられています。実情を知り、橋下流の地方自治破壊と対決する理論的・実践的な確信をつかむことができます。民法協でも取り扱っていますので、ぜひお買い求め下さい。

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