民主主義の意味を履き違えた橋下氏・維新の会にNO!―大阪法律家8団体共催 大阪「維新」を考えるつどい

2012年03月28日

弁護士 中 峯 将 文

1 はじめに
 2012年3月5日、エル・おおさか南ホールにて、大阪法律家8団体共催集会「教育基本条例・職員基本条例 これでいいの? 大阪の公教育と公務員 2条例にNO! 大阪『維新』を考えるつどい」が開催されました。民法協幹事長で自治労連弁護団の城塚健之弁護士の開会挨拶から始まり、連合大阪法曹団代表幹事で大阪市労連弁護団でもある北本修二弁護士がアンケート調査、メール調査、組合事務所の明け渡し請求等の大阪市職員を取り巻く現在の情勢報告を行ないました。
 次いで浦部法穂・神戸大学名誉教授の講演があり、その後、大阪市労働組合連合会から田中浩二書記長が、大阪市職員労働組合から島  淑美副執行委員長が、大阪府関係職員労働組合から橋口紀塩執行委員長が、大阪教育合同労働組合・堺支部から高畠伸書記長が、現場からの声を届けられました。 
 最後に「法律家8団体と参加者一同は、大阪における民主主義の危機に立ち上がり、2条例案の成立を阻止し教師や自治体職員に対する不当な人権侵害に抗議するとともに、住民との協力共同により、真の公教育・地方自治の実現に向けて全力を尽くすことを誓う。」とのアピールを採択しました。

2 浦部法穂・神戸大学名誉教授の講演
 浦部教授は「民主主義が民主主義を滅ぼす」というテーマで、講演されました。
 教授は「大阪はミュンヘンと同じ経過を辿っている。国政でも大政党が擦り寄って生き残ろうとする状況は、ミュンヘンと同じである。そしてミュンヘンの小政党であったナチスが勢力を広げ、ヒトラーはミュンヘンの王様からドイツの王様になった。大衆の人気に群がった結果がナチスの独裁を生んだ。」と、大阪とミュンヘン、大阪維新の会とナチスとの類似性を述べました。
 また、「ところで、ドイツは社会権を初めて保障したワイマール憲法を持つ国であるにもかかわらず、そのようなドイツからなぜナチスやヒトラーが出てきたのか。」と問題提起をし、引き続き、「当時のドイツでは、ワイマール憲法は無用の長物と考えられていた。この状況は、現在の日本と似ていないか。主要政党は日本国憲法を敵視している。自民党は憲法改正案を提出しているし、民主党も憲法改正を主張している。いまや護憲勢力はほんの一握り。憲法なんかどうでもよいという風潮が橋下・維新の会を支えている。憲法軽視が容認されるから憲法違反のアンケート調査もできる。では、憲法軽視の風潮はどこから来るのか。それは、国民の『権力依存』の意識にある。憲法は国家権力を国民が監視するためのもの。権力を危険視する感覚がないと、憲法軽視は当然のことになる。維新の会・橋下の理屈はそこにつながる。『法律が悪い、裁判所が悪い、府労委が悪い。』で通ってしまう。そして、マスコミが大衆人気のある維新の会・橋下に迎合することにより国民の憲法軽視を助長する。」と現在の日本に共通する国民意識の根本的な問題点を指摘しました。
 さらに、教授は、「『民主主義』とは『民意に基づく政治』であると言われるが、これを実践することは決して簡単なことではない。民意は一つではないからである。多様な民意を出来る限り反映しなければならないのである。たしかに最後は多数決によらなければならないが、これで民意が保障されるわけではないことを常に意識しなければならない。多数決に至るプロセスでいかに多様な民意を汲むことが出来たかが重要なのである。このように考えた場合、『民主主義』とは、多様な民意の合意に向けたプロセスと言うことができる。橋下流の民主主義の考え方は根本的に間違っているのだ。」と、橋下流を批判する際の視点を提供してくれました。

4 現場の声から
 田中氏と島崎氏が語った内容で共通していたのは、職場内での相互監視の状況がはびこり、非常に働きにくい職場になっているということでした。大阪市職員労働組合の島崎副執行委員長が「戦前みたい。」と語っていたことが印象に残っています。職員を統制するために、アンケート調査、メール調査は効果絶大だったということです。
 また、橋口氏は、「福祉の現場ではチーム全体で一つの仕事をするのであり、相対評価で職員の関係が悪くなり仕事が成り立たなくなれば府民の利益に反するし、土木の現場で風通しが悪くなり技術が伝承されなければ仕事の質が低下し、府民の利益に反する。」と言っておられました。高畠氏は、「今、公立高校の入試では外国出身者のための特別措置があるが、これを学区撤廃で自由化したらどうなるか。第4学区では、今年は定員割れをしたので来年は定員を減らす学校が出ている。特別措置を取る学校が廃校になると、この生徒たちの進路はどうなるのか。」と言っておられました。

5 最後に
 橋下徹氏が昨年11月27日に大阪市長選挙に当選してからというもの、公務員批判、労働組合批判がますます強まっています。今年2月9日には、あろうことか大阪市職員に対する思想調査というべきアンケート調査まで行なわれる始末です。
 また、大阪府議会には大阪維新の会により「教育基本条例案」「職員基本条例案」が提出され、大阪市議会にも同様の条例案が提出される予定です。これら2条例案が議会で可決されるようなことがあれば、首長による公教育・公務員に対する統制が正当化されてしまいます。そこでは、多様な個性を持った子ども一人一人に価値を見出すことも、多様な住民のニーズに向き合うことも全く予定されていません。維新の会が謳う競争原理・自己責任論に拠った、弱者切捨ての世の中を容認することになるのです。
 前記のような現在の大阪を取り巻く現状で、法律家8団体の弁護士および大阪市、堺市の職員等、総勢161名が、民主主義の意味を履き違えた大阪維新の会、橋下徹氏にNOを突きつけるため集まりました。浦部教授は、「橋下が大阪の王様でいるうちに彼を辞めさせてください。」と言って講演を締めましたが、参加者の総意であったでしょう。