民主法律時報

下請いじめを許すな! ミネ企画が取引先を提訴!

弁護士 喜 田 崇 之

1 はじめに

 平成24年12月27日、印刷物の企画、制作、製版等の下請会社である㈱ミネ企画が原告となり、そのメイン取引先であった印刷業界最大手グループ会社の㈱トッパングラフィックコミュニケーションズ(以下、トッパン)を被告として、合計金1億3342万7658円の損害賠償ないし不当利得返還請求を求め、大阪地方裁判所に提訴した。
 この事件は、民法協「中小零細事業主のための独占禁止法研究会」に寄せられた事件であり、同研究会初の大型訴訟となったものであるので、紹介する。弁護団は、吉岡良治、西念京祐、喜田崇之、西田敦、岩佐賢次(以上、敬称略)である。

2 事案の概要
 
 大雑把に事実経過は次の通りである。
 ㈱ミネ企画は、平成9年頃から、トッパンとの間でパッケージ印刷等の業務を請け負い始め、平成17年頃には、トッパンからCTP色校正業務を請け負うことになった。CTP色校正業務のためには、市場価格6000万円以上もする特殊なCTP設備が必要であるところ、㈱ミネ企画は、もっぱらトッパンの同業務のために同設備をリースで導入した。当然のことながら、当事者間において、CTP色校正業務が今後も長期間継続することが見込まれての導入であった。
 ところが、トッパンは、平成21年12月頃、CTP色校正業務の単価を約4割近くも切り下げることを要求してきた。かかる減額を受け入れなければ取引停止がありうることをちらつかされたことから、㈱ミネ企画は、減額を受け入れざるを得なかった。
 このような状況のもと、トッパンは、㈱ミネ企画に対し、通常の市場価格を大幅に下回る価格で画像補正業務を請け負うことを要求してきた。トッパンが提示した単価で利益を出すことは不可能であったが、㈱ミネ企画は、CTP色校正業務を打ち切られることをおそれ、やむをえずトッパンの提示した単価で画像補正業務を受け入れざるを得なかった。
 トッパンは、このようにCTP色校正業務の取引停止を背景にして、CTP色校正業務のさらなる単価切り下げ、画像補正業務のさらなる単価切り下げを強行していった。画像補正業務では、市場価格で単価1000~3000円の業務を、単価10円、20円に設定するなどした。
 その後、㈱ミネ企画とトッパンの関係は悪化し、平成22年9月頃、トッパンは、色校正業務も含めてすべての取引を一方的に打ち切ったものである。

3 中小企業庁への申告

 この事件は、研究会への相談の前に、㈱ミネ企画本人が中小企業庁へ下請法違反の申告を行っていた。しかし、中小企業庁は、同申告を受け、どれだけの調査を行ったのか不明のまま、下請法違反による勧告等の措置を取らなかった。
 弁護団としては、まず、詳細な事実調査を行った上で、法律的な分析を行い、下請法違反の事実を、公正取引委員会下請法運用基準(平成15年12月11日事務総長通達第18号)の考え方に沿った形で整理し、さらに証拠資料も添付した上で、平成24年7月24日、改めて中小企業庁に下請法違反の申告を行った。
 ところが、中小企業庁は、既に処理済みであるとして、再度の調査・検討を行うことを頑なに拒否した。中小企業庁は、下請法・独占禁止法を遵守させることを役割としているにかかわらず、再度の調査を行おうともせず、自らの職責を放棄したのである。
 弁護団としては、やむなく戦いの場を裁判所に移すことにした。

4 原告側の主張・法的争点

 本件のように、元請業者からの業務に特化した多額の設備投資の負担をしている場合等の継続的契約においては、信義誠実の原則に照らし解約権の行使は制限されるのが裁判例の趨勢である(東京地裁平成16年4月15日、同平成22年7月30日等)。本件でも、トッパンの一方的な契約打ち切りは違法・無効であり、CTP色校正取引の契約当初の適正単価が継続していれば得られたであろう利益等の損害賠償を請求した。
 また、CTP色校正業務の単価切り下げ、画像補正業務の著しく低い単価設定は下請代金の買いたたきを禁ずる下請法第4条1項第5号に違反し、また、トッパンがその優越的地位を濫用して単価切り下げを強要したことは、独禁法第2条第9項第5号に違反し、公序良俗(民法90条)に違反して無効となる。ゆえに、これら取引によってトッパンが実際に支払った額と、適正な価格との差額につき、不当利得の返還を請求した。

5 提訴の意義・今後の見通し

 中小零細企業に対する単価切り下げ、様々な不利益の押しつけ等、大企業の横暴は、昨今の不況でますます深刻の一途をたどっている。実際の取引では下請法の各種規定が遵守されないことが多く、下請業者は不利益を押しつけられているのであるが、中小零細企業は狭い業界の中で大企業の圧力に屈してなかなか提訴することができないことが多い。本件提訴はかかる現状に一石を投じるものであり、その意義は決して小さくない。
 弁護団としては、下請法・独禁法を武器として、大企業の横暴を許さない判決を勝ち取りたいと考えている。

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