民主法律時報

Q:成果主義は公務員になじむ?

Q:そもそも成果主義を賃金など人事に反映させる制度とは、どのようなものでしょうか。公務労働者になじむのでしょうか。

A:条例案では、第5章(7条以下)において、人事評価制度を定めています。
 これは、任命権者及び任命権者が指定した上級の職員(=「評価権者」)によって、個々の職員にSからDまでの5段階のランクを付け、ランクに応じて、職員の待遇に差をつけるというものです。
 具体的には、1年の評価期間において、評価権者が、規則で定められた基準により、個々の職員に対し、能力評価及び業績評価(こちらのQ&A参照)を行い、その上で総合評価としてSからDのランクをつけます。この評価が、直近の昇進や給与、また、期末手当及び勤勉手当に反映されることとなります。評価権者による評価は、個々の職員が行った自己評価、及び、評価権者による3回の個別面談を経て決定されます。
 条例案第12条では、人事評価の結果について、「直近の任用及び給与に適切に反映されなければならない」とされ、また、「期末手当及び勤勉手当」については、人事評価の結果により「明確な差異が生じるように」することが義務づけられています。
 このように、SからDまでの5段階のランクがつけられ、給与に明確な差がついたり、ひいては免職される恐れまであることによって、職員の仕事はどうなるでしょうか。
 もともと「能力」「業績」などは曖昧な言葉ですが、公務の場合は特に、一体何をもって「能力」「業績」とするのか、一層不明確です。にも拘らず、個々の職員は、1年単位で5段階にランク付けされることになるのです。そうなると、職員は自らの生活のため、少しでも高いランクを目指すこと、まかり間違ってもDランクを付けられないように仕事を進めることを強いられるようになります。
そして、評価をするのはあくまで「評価権者」ですから、職員としては、短期間に成果が出る仕事、評価権者が高い評価を与えそうな仕事は優先的に行い、そうでない仕事についてはなおざりにしてしまうということにもなりかねません。結果として、職員が住民の声に向き合うことができず、知事や上司の顔色ばかりうかがうということにもなってしまいます。
公務の現場に成果主義がはびこることで、公正中立な行政が害され、住民無視の現場になってしまう危険は、きわめて大きいといえます。
 公務は住民の福祉を主眼に置くべきものであり、短期的な目先の目標や、上司による評価を追いかけるものではありません。
 公務労働に、この条例のような成果主義は、根本的になじまないものといえるでしょう。

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