民主法律時報

第69回日本労働弁護団総会 参加報告   

弁護士 谷口 真由

2025年11月7日・8日の両日、福岡にて第69回日本労働弁護団総会が開催されました。本総会では、昨今の労働法制をめぐる政治的な動きへの危機感が共有されるとともに、「AIと労働法」というテーマの基調講演に始まり、AIの進展に伴う新たな労働問題や、公務員の諸問題、労働者性の判断基準に関する議論が展開されました。

冒頭の幹事長報告では、昨今の「働きたい改革」と称する経団連や一部政治家による労働時間規制緩和の動きに対し、強い懸念が示されました。「仕事が好き、やりがいがある」という動機で長時間労働が始まり、結果として過労死に至るケースは後を絶たないこと、規制緩和は、長時間働ける者だけが評価される指標を作り出し、家庭の事情等で長時間労働が困難な人々を排除することに繋がりかねないという懸念から、長時間労働を許容する社会への回帰を断固として阻止する必要性が強調されました。

基調講演は、九州大学法学部准教授の新屋敷恵美子先生より、「AIと労働法」というテーマで行われました。講演では、まず、AIによって雇用がなくなるという視点とAIによって仕事のやり方が変わるという視点はあったものの、AIとの協働によって「働き方がどう変容するか」という視点が欠落しており、労働者の権利を守るために、どの様に働き方が変わるのかを踏まえて、守られるべき倫理規範、法規範を考える必要があると問題提起がされました。イギリスのTUC(英国労働組合会議)の調査を紹介し、AIは労働者の採用場面や人事評価の場面で利用されているが、労働者に関するデータが一方的に使用者に収集されているという問題点があると指摘され、労働者も同等の情報を収集する権利があるということ、職場におけるAIの使用に関しては、システムを導入する前に使用者は労働者と協議する等、団体交渉の対象とすることが効果的であるとの報告がされました。

労働問題の議論・報告では、各地の弁護士からの事件報告をはじめ、問題提起を受けて活発な議論がされました。

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