民主法律時報

国際法学から見た集団的自衛権――集団的自衛権連続研究会第1回

弁護士 宮 本 亜 紀

1 連続研究会の開催

 民法協、自由法曹団大阪支部、青法協大阪支部、大阪弁護士9条の会が共催で、著名な学者を講師に、集団的自衛権の連続研究会を企画しました。第1回目は、国際法学の松井芳郎先生(名古屋大学名誉教授)を迎えて、9月29日に北浜ビジネス会館にて行いました。
 昨年12月6日に特定秘密法強行採決、今年7月1日に解釈改憲で集団的自衛権を認める閣議決定という安倍政権の暴走加速に、多くの国民が不安を抱いています。世論調査の数字でも表れていますが、憲法講師の依頼が増えている、特にこれまで繋がりのなかった団体からの依頼もあることに、国民の不安を実感できます。その中で、講師を務める弁護士自身が、心底理解したい、疑問をぶつけて議論したい要求から、弁護士(と民主団体活動家)のための研究会をすることになりました。第1回目は、国際法学の松井芳郎先生、第2回目は、憲法学の森英樹先生(名古屋大学名誉教授)という豪華な企画でした。

2 松井芳郎先生の講義と討論

 国際法学をきちんと勉強した弁護士は少ないと思います。集団的自衛権は国連憲章51条に根拠があると言われても、その国連憲章の成り立ちや構成の意味、国連憲章違反にはどのように対処されてきたのか、国際司法裁判所に強制力がない中で意味はあるのか、国際政治のパワーバランスで動くしかないのか等、疑問が多くありました。松井先生には、(1)集団的自衛権に留意しながら国連憲章の集団安全保障体制における自衛権の位置付けについて整理し、(2)安倍首相・安保法制懇の集団的自衛権論の国際法の観点から見た問題点について、前提の講義を1時間していただき、さらに1時間弁護士らの疑問に対し応答の講義をいただきました。
 充実した2時間余りの研究会で私が得たことは、主権国対等の理念と戦争を違法化した理念ある国際法が確かに存在して、経済力格差の著しい国際社会であっても、国際法を実効化するのは国際世論の力であることです。そこに、戦争放棄の日本国憲法の「初心」が力を持つことです。

3 研究会成果の活

 同日は、国会開会日行動等と重なって参加できなかった方も多いと思います。自由法曹団で、講義内容を広く活用することも企画中です。
 集団的自衛権行使のための自衛隊法等の法改正は、11月沖縄知事選、4月統一地方選挙の情勢を見てから行われるとのことで、この間に、知力を蓄えると同時に実践的に反対運動を盛り上げる方法を練ることに、民法協としても取り組みたいと思います。

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