民主法律時報

東大阪医療センター事件の全面勝利的和解のご報告

弁護士 佐久間 ひろみ

事案の概要

本件は、三次救急を担う中河内救命救急センターの現場で中心的な存在であった外科医(以下、Ⅹ医師)が、同センターの指定管理者である東大阪医療センター(以下、単に「法人」といいます)から不当な戒告処分及び配転命令処分を受けたことから、これらの無効確認等を求めて大阪地方裁判所に訴訟を提起し、争った事件です。この度、大阪地方裁判所において、法人がⅩ医師に対するこれら全ての処分を撤回し、遺憾の意を表明し、相当の解決金を支払うという、実質的な全面勝利と言える内容で和解が成立しましたので、ご報告いたします。

先立つ仮処分決定-極めて珍しい就労請求権の認定

この事件については、すでに何度か民主法律時報でご報告している通り、2022年11月、仮処分決定がなされ、労働法の分野において極めて珍しい「就労請求権」という権利が認められました。本訴ではこの仮処分決定が維持されたうえで和解となったものです。

戒告処分の撤回

戒告処分の対象となった行為は、コロナ患者に対する呼吸器停止という処置ですが、これについては、一部マスコミにより、X医師の患者に対する処置が、あたかも大変危険な行為であるかのように報道されました。しかし、Ⅹ医師は、患者を説得する目的で、十分に安全性を確保した状態で一時的に呼吸器を停止しただけであり、危険性は全くありませんでした。ところが、法人は、後日になって突然上記行為を問題視し、戒告処分を行ったのです。結局法人は、今回の和解で、この戒告処分を撤回しております。我々としては、これにより改めてⅩ医師の当時の医療行為に何ら非がなかったことが証明されたと考えております。

配転命令の撤回

また和解では、2022年3月になされた、Ⅹ医師に対する中河内救命救急センターから法人が経営する東大阪医療センター(二次救急)への配転命令も撤回されました。この点、配転先である東大阪医療センターは二次救急病院であり、中河内センターで行うような一刻を争う緊急手術を行うことはなく、しかも、元々人員が不足していたわけではなかったことから、X医師に対する報復人事であることは明らかでした。この配転命令により、X医師は手術をする機会を奪われ、手術の症例数が足りず外科専門医の資格を失う恐れがありました。そこで弁護団は、急ぎ大阪地方裁判所に対し、仮処分の申し立てたところ、上記の通り就労請求権を認める決定が出ておりました。和解において、Ⅹ医師の配転命令が撤回されたことで、改めて法人の配転命令には理由がなく、不当な内容であったことが改めて確認されました。

まとめ

就労請求権を認める仮処分決定がありながら、優秀なⅩ医師を三次救急である中河内救命救急センターの医療現場に戻せなかったことは、大変残念に感じております。しかし、不当な圧力に屈しなかった志ある医師が、今後現場に戻り、医師として活躍されることは、社会にとって意義のあることだと確信しております。弁護団は、今後もⅩ医師の活躍を応援していきたいと思います。(弁護団は小林徹也、杉島幸生及び当職)

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