民主法律時報

門真市「だまし討ち」懲戒処分取消訴訟・大阪地裁で全面勝訴判決

弁護士 谷 真介

 2026年3月30日、大阪地裁(中島崇裁判長)において、門真市職員労働組合(門真市職労)の執行委員長及び書記長(処分対象行為時)に対する懲戒処分の取消訴訟の判決が言い渡され、原告らの請求を認容し、処分を取り消す全面勝訴判決を得た。

 門真市職労では、1971年の結成以来、委員長と書記長間の協議や検討など交渉に関わる組合活動を勤務時間内に有給で行うことが長年認められてきた。2009年に市側との間で時間内組合活動についてのガイドラインを策定した際にも、従前の時間内活動を制限しないことが確認されており、原告らは職場を離れる際に直属の上司の承認を得て上記活動を行っていた。しかし、2019年4月に「市民」からの通報がされたとして、市当局(人事課)は、事前に注意や指導、是正の機会を一切与えることなく、秘密裏に半年間にわたり委員長の離席状況を上司に記録させた。そして2020年10月、職務専念義務違反を理由として、委員長を減給、書記長を戒告とする懲戒処分を強行した。

本件では、不当な懲戒処分そのものの違法性に加え、訴訟に先立つ公平委員会における審査請求手続の不公正さも極めて重大な問題であった。公平委員の一人である岩本安昭弁護士は、市側の代理人(顧問弁護士)である森末尚孝弁護士と長年同じ法律事務所を共同経営し、過去には大阪市における組合攻撃に関わる多数の事件で大阪市側代理人を共同で務めていたという密接な関係にあった。審査請求手続では第三者機関としての公正性が根底から覆されているとして岩本委員の忌避・回避を申し立てたが、公平委員会はこれを却下し、不公正な委員構成のまま棄却裁決を出した。これを受け、取消訴訟では懲戒処分の取消しとともに、公平委員会のあり方そのものを正面から問うべく裁決固有の違法を理由とした裁決の取消請求も併合して提起した。その後の情報公開請求において、公平委員会の議事において、岩本委員が率先して忌避・回避申立の却下を先導したり、門真市への証拠提出の求めについて消極的な姿勢を示していたことも明らかとなった。

 取消訴訟において最大のインパクトは、①公平委員会では消極的な姿勢により提出されていなかった内部文書が明らかになったこと、そして②審査請求手続では未実施だった当時の人事課長及び委員長の直属の上司の証人尋問の採用・実施であった。

①訴訟になって初めて開示された委員長の所属部署から人事課への相談記録(情報開示請求により得た「市当局が顧問弁護士に相談したメール」に添付されていたものであり、マスキングされていたが原告の強い求めを受け、市が開示した)では、「市民からの通報メール」の数か月前の段階で、人事課が委員長の離席状況を詳細に把握しながら「当面静観」を指示していた事実が判明した。同じく訴訟で初めて開示された、本件の調査の進め方に関する文書には、関係者へのヒアリングすら実施していない時点で、すでに「マスコミ想定QA」や「処分量定」を検討していたこと、さらには人事課長自身が処分対象となり得ることを懸念する記載まであり、本件が「処分ありきのだまし討ち」であることが浮き彫りとなった。

②法廷での証人尋問では、委員長の直属の上司は、自身がガイドラインの詳細すら知らず従前の慣習として離席を承認していたこと、委員長から丁寧な説明を受けて適法な活動だと納得していた旨を証言した。当時の人事課長も、組合側に注意指導をあえて行わず、証拠収集のため観察記録を付けさせたことを認めた。これらの証拠と証言により、市の懲戒処分ありきの「だまし討ち」であったことが立証できた。

 判決は、原告らの時間内組合活動について、形式的にはガイドライン等で許容された範囲に該当せず、職務専念義務違反の成立自体は免れないとした。しかし、原告らが長年上司の承認の下で活動を継続し、指導や注意を受けることのない状況が続いていたことから、原告らにおいて「時間内組合活動は黙認されていると受け止めることがあり得る状況であった」とし、市側が本件離席の状況を把握したのであれば、原告らに対して勤務時間中に行うことができる活動内容についての認識を確認し、ガイドラインの解釈を示すなどして注意指導を行うべきであったとした。これらを行わず5か月以上も放置して観察記録を作成させ、それを根拠に懲戒処分に及んだ市の対応について、信義則に反し、社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を逸脱・濫用したものとして違法であるとし、本件各懲戒処分を取り消した。なお、裁決取消請求については、原処分を取り消す以上は訴えの利益を欠くとして却下された。

 本判決は、公務員の時間内組合活動について、仮にそれが職務専念義務を免除できる範囲を超えていたとしても、使用者がそれを理由に懲戒処分を行うには、事前の警告や適正な注意・指導等の段階を踏むことが信義則上義務付けられることを司法の場で明確にした点で極めて重要な意義を有する。現在控訴期間中であり、組合は門真市に控訴の断念を迫っているが、仮に控訴されたとしてもこの意義ある判決を高裁でも維持させるべく引き続き奮闘したい。(弁護団は豊川義明、城塚健之、河村学、増田尚、谷真介、冨田真平)

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