声明

時間外労働の上限規制に関する声明 ―労働者の生命と健康を守り、生活時間を確保するために―

2017年03月16日

本年2月14日の働き方改革実現会議において、政府は、「時間外労働の上限規制について(事務局案)」を示した。その内容は、労働基準法を改正し、三六協定においても超えることのできない時間外労働の上限を、原則として「月45時間、年間360時間」とし、特例として、臨時的な特別の事情がある場合には、年間720時間(月平均60時間)を認めるものである。しかも、この場合には1か月間の上限は明示されていない。その上限については、安倍首相が「月100時間未満」とする意向であると報道されている。

時間外労働について三六協定でも超えることのできない上限規制を罰則付きで設けるべきである。しかし、「1か月間でおおむね100時間の時間外労働」は、脳・心臓疾患の労災認定基準(平成13年12月12日付労働基準局長通達)においてさえ業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと指摘されている「過労死ライン」である。「100時間未満」というだけでは、例えば99時間59分の時間外労働も容認することになりかねない。政府案では、時間外労働(労基法32条)の上限規制のみで、休日労働(同法35条)の規制については何も述べられていないが、「月100時間」の時間外労働に、さらに休日労働を行なうことになれば、過労死ラインを優に超えることとなる。これでは、国自ら過労死するまで働かせることを容認するものであって、到底許されるものではない。

また、上限規制を実効性あるものとするには、使用者に正確な労働時間の記録・保存を罰則付きで義務づけることが必要不可欠であるが、政府案は全く言及していない。

このように、現在の政府案は、労働者の生命と健康を守り、生活時間を確保するものからかけ離れており,「働き方改革」の名に値しない。

現行法上、労働者の過半数代表の合意(36協定)なしには時間外労働は認められないが、この機会に、労働者、労働組合に労働時間制についての活発な議論とその制度の活用を期待したい。ただ、労働者の生命と健康を守り私的な生活時間を確保するために、労働時間の上限規制を策定することは、本来、政府および国会の責任である。労使の協議も重要な意義があるが、政府および国会は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進する国の責務(過労死等防止対策推進法4条1項)を自覚し、実効性ある上限規制を策定すべきである。

当協会は、繁忙期に月100時間ギリギリまで時間外労働を認めるといった例外を設けることには強く反対し、労働時間の上限規制を実効性あるものとする法制度の整備を求めるものである。

2017年3月16日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令