労働相談懇談会の報告

2013年02月25日

弁護士 中 村 里 香

 2013年1月11日、国労大阪会館にて、今年初の労働相談懇談会が開催された。

初めに、西川大史弁護士より、昨年9月から12月にかけての労働情勢報告がなされた。報告は多岐にわたるが、まずは、いわゆる「不更新条項」付きの契約書に署名したことを理由とする期間社員の雇止めを有効とした、昨年9月20日の東京高裁判決が目を引く。契約更新を繰り返し、11年以上も継続的に勤務してきたことや、正社員と同様の業務を行っていたという実態を軽視し、「期間社員は景気変動に対応する臨時的・一時的雇用者」とし、かつ、不更新条項付契約書に「自由な意思」で署名したと認定したのは、あまりにも現場の実態と乖離した事実認定といえよう。この判決は一方で、原告のように更新を繰り返してきた労働者が、使用者から不更新条項付の契約を迫られた場合、「不更新条項に合意しなければ、有期雇用契約が締結できない立場に置かれる一方、不更新条項付契約を締結した場合には、次回以降の更新がされない立場に置かれる、いわば二者択一の立場に置かれる」と判示している。その上で、「半ば強制的に自由な意思に基づかずに(不更新条項付)有期雇用契約を締結する場合」には、その「効力が否定されることがあり得る」としている。しかし、契約更新を繰り返してきた労働者が不更新条項付の契約更新を迫られた場合、「自由な意思」に基づいて署名する場合は通常は考えがたく、この部分はリップサービスではないかと思われる。
昨年11月1日に大阪地裁で雇止めを有効とする判決があったダイキン工業事件も、長年勤務してきた有期雇用の労働者を、不更新条項を利用して雇止めにしたという点で類似の事例といえよう。
このように、不更新条項を濫用的に利用する事例は、労働契約法改正に伴い、今後も頻発すると考えられ、現在の判例の流れを変えていくことが喫緊の課題である。この点については、1月28日の労働法研究会でも重点的に取り上げたので、そちらも参照されたい。
このほか、1審判決を取り消し、過労死企業名不開示を適法とした大阪高裁判決や、ブルームバーグ記者の解雇を無効とした東京地裁判決などが注目される。

続いて、谷真介弁護士より、「改正高年法と継続雇用の仕組みについて」と題し、高年法の改正点や、高年法に関連した労働相談時の注意点などに関して解説講義が行われた。
高年法に関する紛争としては、典型的には、使用者が同法9条1項の措置を全く採っていない場合、継続雇用希望者が選別基準を満たしているかが争われる場合(津田電機計器事件など)、継続雇用後の労働条件が争われる場合、継続雇用後の雇止めが争われる場合などの類型が考えられる。
このうち、使用者が9条1項の措置を全く採っていない場合には、私法的効力を認めない裁判例が多いことから、地位確認請求の裁判のほかに、職安に申告を行うといった方法が考えられる。次に、継続雇用後の労働条件が定年前に比べて著しく低くなるといった問題については、定年前の6割程度の賃金での雇用契約も有効とした裁判例もある。しかし、特に、中小企業などで定年前と同じ業務に従事している場合においては、有期雇用の労働者について不合理な労働契約を禁止した改正労働契約法20条を積極的に活用し、不合理な労働条件の是正を求めていくべきであろう。この点、改正労働契約法が適用される典型例としては、通勤手当や安全衛生などが挙げられる。また、継続雇用後の雇止めについては、改正労働契約法  条で雇止め法理が明文化されたこともあり、労働者の合理的期待権はきわめて高いという前提で臨むべきであろう。
本年4月より施行される改正高年法については、やはり、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み(改正前9条2項)を廃止したことが、最大のポイントである。とはいえ、今後も相談が続くことが予想される。
高年法に関する相談の際のポイントとしては、まずは、①経過措置に注意し、何歳までの雇用が義務付けられているかを確認すること、そして、②継続雇用をしない理由や継続雇用後の労働条件について、労使協定、就業規則の内容を把握することが出発点となる。その上で、③継続雇用基準との関係で、査定期間を把握し証拠を確保することが必要となる。査定に関する証拠の確保については、訴訟となれば詳細な主張立証が求められることもあり、訴訟に耐えうる証拠の確保には困難が予想される。職場に組合がある場合には、査定差別をさせないことを第一義に考え、また、査定を低く付けられた場合には理由を聞いてメモを残す、場合によっては面談を録音するなどの綿密な証拠確保が必要であろう。そして、④違反の場合の対処方法としては、団体交渉や訴訟のほか、職安への申告も考えられる。
今後、使用者側からは、継続雇用に際して配転や転籍を迫る、また、定年前の労働条件を下げることを条件として継続雇用する、継続雇用後の労働条件を抽象的なものとする、といった手法が採られることが予想される。早期に相談を受け、労使協定が労働者側に有利なものとなるよう職場内での取り組みをすすめるとともに、相談後も相談者をフォローしていくことが必要であると考えられる。

さらに、地域からの事例報告では、城北友愛会より、アルバイト募集の求人に応募したところ、「委託販売契約書」に署名させられ、果物の販売業務に従事したものの、最低賃金を大きく下回る水準の報酬しか支払われなかったとの事例が報告された。
このように、従業員に労働者性がないと偽装することにより経営リスクを押し付けるといった事例は古くからあるが、最近、種々の業態で散見されるように思われる。今後の経過に注目したい。

今回、弁護士は6名、組合からは11名の参加であり、新年初の懇談会としては少し寂しさを感じた。次回は、4月  日に国労大阪会館の2階小会議室で開催することとなっているので、是非とも多数の参加を待ちたい。