意見書

臨時国会における労働者派遣法改正法案の成立を求める意見書

2010年11月22日

民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令

  1. 派遣労働者の窮状は何ら変わっていない。
     2008年秋頃からの数十万人にも及ぶ「派遣切り」「請負切り」により、多くの派遣労働者が雇用と住居を失い、路頭に迷うという事態が生じた。こうした極めて不安定で劣悪な労働条件に苦しむ派遣労働者の状況を改善するために、労働者派遣法を抜本的に改正することが必要とされた。厚生労働省が発表した2010年版労働経済白書においても、「労働者派遣事業の規制緩和が、こうした傾向を後押しした面があったものと考えられる」と指摘されているところである。
     しかし、2年を経過した現在においても、派遣労働者を保護する法規制は何ら図られておらず、現在も、違法派遣と安易な派遣切りが横行している。政府は、労働者派遣法の改正案を作成し国会に提出しているが、その国会審議は全く進んでいない。派遣労働者の窮状は現在に至るも何ら変わっていないのであって、速やかな法規制を直ちに行う必要がある。
  2. 労働者は労働者派遣法の規制強化を求めている。
     労働者派遣法については、労働団体や労働運動にかかわる諸団体がこぞってその抜本的改正を求めている。個々に改正案の内容について修正要求等はあるものの、規制強化を図ること、ことに製造業務派遣・登録型派遣の原則禁止及び雇用契約申込みみなし制度の創設については労働者が一致して要求しているのである。
     日本労働弁護団が、2010年10月5日、臨時国会での派遣法改正案の成立を求める意見書を発表し、日本労働組合総連合も、10月6日、「労働者派遣法改正法案の早期成立を求める特別アピール」を発表した。「労働者派遣制度は、派遣労働者の保護の強化と雇用の安定を実現する方向に転換させるべきであり、今回の改正法案は一日も早く成立させなければならない」とするものである。11月1日には自由法曹団が、11月9日には日本弁護士連合会が、それぞれ院内集会を実施している。
     労働者の雇用不安を逆手にとって労働者が派遣労働を望んでいるとする言説があるが、労働者が求めているのは雇用の確保と安定的な雇用なのであり、派遣労働という就労形態を望んでいるわけではない。
     労働者派遣法の規制強化は、労働者がこぞって要求しているところであり、政府はこれに応える義務がある。
  3. 政府は公約を実現すべきである。
     現在の政府与党は、2009年8月の衆議院選挙前に、労働者派遣法改正案を呈示し、国民的な支持を勝ち取って政権交代を果たした。法改正は国民への公約であり、その放置は国民に対する裏切りである。
     政府は、選挙公約を信じて投票した国民・労働者の要求・願いに思いを致し、全力を挙げてその実現を図るべきである。
  4. 臨時国会での労働者派遣法改正の実現を
    (1) 今回の改正法案には、①「派遣労働者の保護・雇用の安定」を目的規定に明記したこと、②登録型派遣の原則禁止、製造業務派遣の原則禁止、日雇派遣の原則禁止、グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることの禁止など、派遣が認められる範囲を縮小して労働者を直接雇用しなければならない範囲を拡大したこと、③派遣労働者の賃金等の決定にあたり同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮すること、派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化すること、雇入れ等の際に派遣労働者に対して一人当たりの派遣料金の額を明示することなど、派遣労働者の待遇改善を目的とする規定を定めたこと、④派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす規定を定めたこと、など労働者の利益に資する積極面がある一方で、それぞれの法規制の内容が不十分であること、政令指定業務等について雇入れ申込義務の規定を削除するなど労働者の利益に反する内容も盛り込まれている。(2) 民主法律協会は、法案の不十分さについてはさらなる改善を求め、また、労働者の利益に反する内容については削除すべきと主張している。しかし労働者の保護に資する規制については早急に成立させることが必要である。
     殊に、雇用契約申込みみなし制度は、違法な派遣労働を許さないための法規制であり、法を遵守する限り、派遣元・派遣先には何ら問題の生じるはずのない規制である。このような法規制については、早急に実現が必要であるし、かつ、可能というべきである。
    違法行為を許さず、「派遣切り」を許さないために、少しでも労働者に資する法規制を早急に実現すること、それが政治の責務である。

    (3) 以上の点から、今臨時国会で、労働者派遣法の改正を成立させるよう強く求める。