声明

府税業務の民間委託の中止を求める声明

2009年04月22日

 大阪府は、「大阪版市場化テスト」と称して、2008年12月17日、府立図書館の運営や府営住宅の家賃回収、府税業務など9業務につき新たに民間委託することを決定した。
 大阪府は、2009年5月から、自動車税について納税者からの問い合わせへの回答などのコールセンター業務を民間事業者(NTTマーケティングアクト)に委託し、同年8月には、電話による納税催告などの業務についても委託する。その後、2010年度には、府税全般のコールセンター業務、データ作成業務、納税通知書発送業務に加え、府税事務所の窓口業務まで民間委託されることになっている。
 府税業務の民間委託について、大阪府は、税収確保を図るとともに、簡素で効率的な税務行政を推進することが目的であると説明している。
 しかし、この民間委託によって、大阪府下で登録されている約250万台すべての自動車について、自動車検査証(車検証)に記載されている全ての情報(自動車のナンバー、車種、年式、所有者、使用者の住所・氏名)が民間業者の手に渡されてしまうのみならず、自動車税がいつから、いくら滞納しているかという滞納情報から、いつ、いくら納付したのかという完納情報まで、あらゆる情報が民間業者の手に渡されることになる。しかも、これらの情報は日々更新され、民間業者に対しても日々最新の情報が提供されることになる。このような民間委託は、個人情報保護の点において、きわめて重大な問題をはらむものであり、個人情報保護法の趣旨、ひいては憲法13条によって保障されている国民のプライバシー権や自己情報コントロール権を侵害するものであるといわざるを得ない。
 大阪府は、民間業者との委託契約に際して個人情報保護遵守を明記するとしているが、民間業者の従業員が顧客情報を無断で持ち出して名簿業者に売却するといった事態が現実に生じている昨今の状況下においては、委託契約上に遵守規定を設けるだけでは、上記のような違法・違憲性を払拭することはできない。個人情報保護法は、国・地方公共団体と個人情報取扱事業者(民間業者)とを明確に区別し、それぞれ異なる法規制を設けているのであるから、大阪府が保有する自動車税に関する個人情報のすべてを丸ごと民間業者の手に委ねることは、明らかに同法の想定を超えるものといわざるを得ない。
 そもそも、府税に関する業務は、府民の生活を支えるための税金を徴収するというきわめて重要かつ公共性の高い公務である。また、納税者への対応は、公平性・公正さが要求されるとともに、納税者の権利・生活を保障するものでなければならない。このような府税業務について、コスト削減や効率化のために民間委託を導入することは、回収結果のみを追求することになりかねず、公平性・公正さを犠牲にし、納税者の権利を害する懸念がある。
 さらに、受託した民間業者が自らの利益追求のために、人件費を圧縮して非正規労働者を使用したり、あるいは、公務員に比して格段に低い賃金で使用することにより、結果的に、「官製ワーキングプア」を生み出すことになりかねないという問題もある。こうした事態は、当該労働者の生活保障に反する点に加え、府民へのサービス低下にもつながると指摘されている。
 以上のとおり、①重要な個人情報の流出・悪用の懸念が高いこと、②公平性・公正さの確保や、納税者の権利保障に反すること、③「官製ワーキングプア」を生み出すことから、府税業務を民間委託することは適当でない。
 そもそも「大阪版市場化テスト」は、条例化もされず議会や府民の審判を受けることなく実施されるなど手法の面でも、地方公共団体の公的責任の放棄や住民サービスの低下につながるとの内容の面でも、その問題はさまざまに指摘されてきた。しかるに、橋下知事は、「大阪発で『官がすべての業務をやらなくても、いくらでも民でできる。』ということを示さないといけない。大阪版市場化テストでできる限りの業務を民に開放していきたい。」などと述べ、民間委託を積極的に推進する姿勢を改めようとしない。
 私たちは、府民のくらしと権利を守る立場から、府民と労働者の権利や生活を脅かす府税業務の民間委託に反対し、大阪府に対し、すみやかに白紙撤回することを求める。

 

 民主法律協会幹事会