大阪府猟友会雇止め事件提訴のご報告

2020年09月15日

弁護士 加苅  匠

1 はじめに

公益社団法人大阪府猟友会との間で有期雇用契約を締結し、関西国際空港で有害鳥獣類の防除業務に従事していた労働者が雇止めにあった事件について、2020年8月21日、雇止めが無効であるとして、雇用契約上の地位の確認を求めて大阪地方裁判所に訴訟を提起しました。

2 事案の概要と経過

大阪府猟友会は、野生鳥獣の保護や有害鳥獣の捕獲、狩猟の適正化を基本施策とし、大阪府域の自然環境の保全や府民の安全・財産の確保等を目的とする公益団体です。主な事業内容は、狩猟免許の交付や狩猟者登録・管理、有害鳥獣類の捕獲などです。浅田均参議院議員(維新)や岡沢賢治府議会議員(維新)らが顧問を務めています(2018年の会報より)。

そんな大阪府猟友会の業務の1つに、空港に離着陸する航空機と鳥の衝突による航空機災害を未然に防止するために、銃器等を用いて有害鳥獣類の防除を行う業務があります。

本件訴訟の原告であるAさんは、2018年1月11日に大阪府猟友会と有期雇用契約を結び、関西国際空港にて上記防除業務に従事しました。2018年3月22日に1回目、2019年3月17日に2回目の更新がなされ、2019年10月1日には勤務態度が評価されてサブリーダー(副所長)への昇格も果たしました。Aさんは、サブリーダーとして職場環境を良くするために、同僚のパワハラや銃刀法違反のおそれがあるような行為などの職場の問題点を各種会議で報告しましたが、これを疎ましく思われたのか、2020年2月28日に同年3月31日をもって期間満了を理由に有期雇用契約を更新しないと通知されました。Aさんは納得がいかず、中央区地域労組こぶしに加入して雇止めの撤回を求めて団体交渉しましたが、撤回されることはありませんでした。

Aさんは、大阪府猟友会が、Aさんに有期雇用契約が更新されるものと合理的な期待をもたせながら、十分な理由も説明もなくなされた雇止めは無効であるとして、訴訟の提起を決意しました。

3 本件訴訟の争点

本件訴訟の主たる争点は、契約期間の満了時に有期雇用契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められるか否かです(労働契約法19条2号)。契約更新についての合理的期待が認められる場合は、解雇と同様に、客観的合理的理由や社会通念上の相当性が認められない限り、雇止めは無効となります。

Aさんが従事する防除業務は、期間限定の業務などではなく、飛行機が空港に離着陸する限り行わなければならない恒常的な業務です。そのため、防除業務に従事する従業員は、健康上の問題など業務に支障が生じる状態でなければ、次年度も働き続けることができると考えるのは当然のことです。また、本件では、更新手続が形骸化され、従業員も銃刀法違反といった特段の問題が生じない限り契約更新されていましたし、Aさん自身も定年を越えても働き続けることができると言われて就職しました。加えて、大阪府猟友会が契約期間中にAさんをサブリーダーという責任ある役職に任命したことは、Aさんに契約更新の期待を持たせる使用者の言動と言えます。

これらの事情から、Aさんには契約更新の合理的期待が認められるところ、Aさんには雇止めされる合理的理由も十分な説明もなかったため、雇止めは無効であると考えます。

4 本件訴訟の意義

本来、事業の中核的・恒常的業務については、正社員(無期雇用労働者)を雇って継続的に業務にあたらせるべきです。しかし、安価な人件費や人員整理のしやすさを求めて、あえて有期雇用労働者を雇いそのような業務に従事させるケースが増えています。本件の防除業務も、大阪府猟友会の中核的・恒常的業務の1つであり、かつ危険性が高く一定の技術や知識を要する仕事ですが、担当する従業員は全員有期雇用労働者でした。このような業務に従事する有期雇用労働者の雇止めを安易に認めてしまっては、労働者の非正規化に歯止めをかけることはできませんし、有期雇用労働者の地位・生活はますます不安定なものとなってしまいます。

また、従業員に対して不当な雇止めを敢行しているような公益社団法人では、府民の安全・財産を守るという社会的責任を果たすことは不可能であり、狩猟免許の管理や射撃による有害鳥獣類の防除といった危険性の高い事業を任せることはできません。

原告及び弁護団は、不当な雇止めを阻止し、あわせて有期雇用労働者の地位の向上や大阪府猟友会の労務の改善を図るために闘っていく所存です。ご支援をよろしくお願いいたします。

(弁護団は、西川大史弁護士と加苅匠)