民主法律時報

ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ

弁護士 清水 亮宏

1 11月の判例ゼミ
2018年11月28日(水)18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。司法試験合格者の方にも3名ご参加いただきました。
今回のテーマは「試用期間と解雇」です。試用期間とは、使用者が労働者を本採用する前に能力や適性を評価する期間のことをいいます。試用期間が付されていても労働契約自体は成立しており、基本的には、試用期間の満了とともに本採用へ移行します。試用期間については、〝(期間中は)いつでもクビにできる制度〟と誤解されて運用されているケースも多いのではないかと感じています。
トラブルに発展することも多いため、テーマとして採用しました。

2 検討した判例・裁判例
まず、三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日 民集27巻11号1536頁)について、中西基弁護士から報告いただきました(レジュメは西田弁護士作成)。試用期間と解雇に関するリーディングケースとされる最高裁判例です。
この最高裁判例は、試用期間の付された労働契約の法的性格を留保解約権付労働契約と解釈した上で、留保された解約権の行使につき、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められると判断しました。中西弁護士の報告を受け、名目上は期間の定めのある労働契約であっても実質的に試用期間として運用されている場合に、契約の性質についてどのように解すべきか、試用期間中の解雇の有効性が争われる場合にどのような点を主張すべきかなどの点について議論しました。

続いて、私清水から、医療法人財団健和会事件(東京地判平成21年10月15日 労判999号54頁)について報告しました。試用期間満了の約20日前の解雇を、指導による改善可能性を考慮せず早まったものであり無効と判断した裁判例です。同旨の裁判例としてニュース証券事件(東京高判平成21年9月15日 労判991号153頁)があります。試用期間満了時の本採用拒否ではなく、試用期間中の解雇について、有効性が厳格に判断されるべきという点を確認しました。

最後に、加苅弁護士から、日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日 労判1045号5頁)について報告いただきました。新卒技術社員の適格性・改善可能性の欠如ゆえになされた6か月の試用期間の中途の解雇を有効とした裁判例です。試用期間中の解雇を有効とした事例の検討を通じて、試用期間中の解雇の有効性が争われる場合の主張のポイント等を学びました。

3 さいごに
ゼミの中盤では、西田弁護士の北海道土産「ROYCEのチョコレート」をおいしくいただきました。日本労働弁護団北海道総会のお土産だそうです。西田弁護士、いつもありがとうございます。
次回の判例ゼミは2019年1月 日(木) 時 分~@民法協事務所です。ぜひご参加ください!

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