民主法律時報

ココロちゃんのカウンセリング教室(第4回)―助言とコンサルテーション―

弁護士 西田 陽子

*当連載は、弁護士西田がカウンセリング教室で学んだエッセンスを、法律相談の妖精ココロちゃんとの対話形式でご紹介するものです。

●K先生(以下「K」):さて、今回は、問題を抱えている本人(対象者)ではなく、対象者と関係の深い人物に、カウンセラーの立場から助言・提案を行うコンサルテーションについて学びます。学校現場であれば、問題とされる生徒本人ではなく、担任教師や家族に助言・提案をする場合がコンサルテーションです。ここでの「相談者」は、担任教師や家族です。

○ココロちゃん(以下「コ」):なるほど。助言・提案をするということは、今までに習った用語を使うと、積極的に「介入」するということかしら。

●K:そうです。傾聴や問いかけを行いながら、①相談者と対象者が抱える問題は何か、②その対象者にどのようになってもらいたいか、③その目的を実現する方法を模索する、という3つの段階において、コンサルテーションを行うことになります。

○コ:ご本人ではなくご家族や組合の方が相談にいらっしゃって、彼らに対してアドバイスすることもあるのですが、そういうときにも使えますか。

●K:もちろんです。例えば、①の段階では、問題の捉え方について情緒的観点から理性的観点にシフトするための助言や、問題を分類するサポートをしたりして、問題を明確化し、捉えやすくすることができます。次に、②の段階では、目的を設定するコツをアドバイスします。目標設定のタイプとしては、対象者に対し直接行動するか、周囲への間接行動をするか、相談者の認知や思考を変えるかなどがありえます。また、行動により刺激を受けて目的は変わっていくので、それにあわせて短期目標や中長期目標を立てることも状況を変える助けになります。

○コ:へえ、マラソンのペースメーカみたいですね。

●K:そうですね。これらの段階を踏んで、相談者は、自発性を発揮する力を身につけていきます。そして、③の段階になると、カウンセラーと相談者には、一緒に協力し合う同盟・協働関係が定着していることが求められます。実現を阻んでいる障壁について検討の俎上に乗せ、相談者の自発的な方策を尊重しつつ、より効果をあげるためにはどうすればいいかを考えます。

○コ:ご家族や組合の自主性を尊重しつつ、アドバイスにより、問題状況を変えていくときの参考になりそうです。

●K:自主性の尊重というお話がでましたが、表現によりコンサルテーションの効果が変わるので、注意してください。普段の言葉遣いや、ノンバーバルコミュニケーションが反映されるので、表現を振り返ることが必要です。また、相談の経緯や文脈によって、表現が大きく変わることにも気をつけてください。相談者が不満を持っているケースなどで、無理な介入をしていることがあります。

○コ:表現に気を配って、介入の度合いをコントロールすべきだということですね。

●K:そうです。もう一つ。カウンセラーの心理状態が、表現を大きく変えてしまうということです。相手に対して理解してほしい気持ちが強すぎると、口調や語気が強くなり、押し付けがましくなることがあります。また、専門家として教えてあげたいという気持ちがあると、法則や理論をレクチャーする構造になり、相談者の心情がないがしろになることがあります。

○コ:自分の心理状態と表現の関連性には、あまり気を配ってなかったように思うので、これから気をつけます。

●K:相談の度に振り返りを忘れなければ、相談技術は徐々に向上していきますので、是非やってみてください。次回からは、趣向を変えて、家族の問題を取り上げたいと思います。

(第5回へ続く)

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