《書籍紹介》岩波ブックレット 『過労死110番  働かせ方を問い続けて30年』森岡孝二・大阪過労死問題連絡会 編

2019年11月15日

弁護士 上出 恭子

1988年4月に全国にさきがけて大阪で初めて実施をされた、弁護士による過労死に関する無料相談「過労死110番」は、過労死救済に向けて大きな取組みとなりました。2018年4月に大阪過労死問題連絡会が行った「過労死110番30周年記念シンポジウム」の内容を一部加筆してまとめたものを、この度、岩波ブックレットとして発刊しました。

本ブックレット発行の発案者である、大阪過労死問題連絡会の会長であった森岡孝二先生は2018年8月1日に急逝しました。亡くなる当日も、本書の執筆を担当された方々に「なんとか実現をしたい」とブックレット発行に向けての強い思いが現れたメールを送られていました。折から国会で審議されていた働き方改革関連法案が出される中、その内容は過労死防止の流れに逆行するということへの切実な危機感が森岡先生を突き動かしていたように思われます。

そのような経緯でしたので、亡くなる直前まで森岡先生が手がけたこのブックレットの発行は、森岡先生から我々に託された「過労死をなくすための大切な取組」、いわば森岡先生からの遺言だと受け止めて、作業を進めてきました。

シンポジウムは、(1)大阪過労死問題連絡会森岡孝二会長(当時)による冒頭の挨拶、(2)過労死110番活動に当初から関わってきた松丸正弁護士による30年の歩みを振り返る基調報告、(3)過労死110番が1988年開始をした当時に製作された、「NHKドキュメンタリー『過労死・妻は告発する』のディレクターの織田柳太郎氏による講演、(4)3人の過労死・過労自殺遺族の報告、そして、岩城穣弁護士の司会によるこの3名の遺族によるリレートークで構成をされています。

過労死救済の30年の歩みが、過労死遺族の肉声とともにコンパクトに整理をされていることに加えて、織田さんのご講演の中では、過労死による被災者は、命を失った先にあった未来だけでなく、「亡くなった人、倒れた人、そしてその家族が死の前に、倒れる前にすでに人間らしい生き方、豊かな暮らしを奪われている」という過労死問題の本質が指摘されています。

過労死遺族が中心となって立法制定に向けて活動をした結果、2014年6月に過労死等防止対策推進法(通称「過労死防止法」)が、衆参両院の全会一致で可決され、その後、啓発事業等が進められています。しかし、その後も、過労死・過労自殺が減る兆しは見えません。そのような中、改めて過労死をなくすために、どういった取り組みが真に必要となるのか。

民法協にて、定価520円(消費税別途)のところ、税込み500円「ワンコイン」というお手頃価格で販売をしていますので、過労死防止の具体策を考える出発点として、是非、お買い求め下さい。