民主法律時報

府労委からの文書要望 ~枚方市・組合事務所事件~

弁護士 西川 大史

1 はじめに

2019年2月14日に、大阪府労働委員会は、枚方市職員労働組合が申し立てた不当労働行為救済命令申立に関する実効確保の措置申立につき、被申立人である枚方市に対して、「現在、本案事件が審査手続中であることから、被申立人は、これ以上労使紛争が拡大しないよう、労働組合法の趣旨に従い、適切に対応されたい」と文書による要望書を出しました。

本件は、枚方市が枚方市職労に対して、組合事務所の明け渡しを通知したため、枚方市職労が不当労働行為救済申立てを行うとともに、実効確保の措置を申し立てた事案です。府労委が、文書要望を行うことは極めて異例のことで、近年、文書要望が出されたことはないかと思います。

2 事件の概要・経過

(1) 枚方市職労は、1971年1月から、枚方市庁舎敷地内の職員会館の一部の貸与を受けて、組合事務所として使用してきました。
枚方市職労が一年ごとに行政財産使用の許可申請をして、枚方市が許可決定するという取扱いがこれまでなされてきました。

(2) 2015年8月の枚方市長選挙で当選した伏見隆市長(所属政党はみんなの党、その後大阪維新の会)は、前職の枚方市議時代から、労働組合に対する批判を繰り返していました。伏見市長は、市長就任後、職員団体は、職員の勤務労働条件の維持改善を「主たる目的」としなければならず、「社会的、文化的、政治的活動等」は「従たる目的」であるという独自の見解に基づき、組合活動への非難を強め介入をしてきました。

(3) 伏見市長は、2016年3月31日に、枚方市職労への平成28年度の職員会館の使用許可に際して、使用目的として「組合事務所としての利用(職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に限る)」との条件を付したのでした。枚方市職労は、組合結成以来、このような条件が付されたことはありません。

伏見市長による組合活動への介入はその後も続き、枚方市職労が発行する日刊ニュースに対して、戦争法反対や安倍政権を批判する記事などについて内容の修正を求めたり、次年度の職員会館の使用不許可を示唆するなどの介入を繰り返しました。さらに、伏見市長は、平成 年度、平成 年度の枚方市職労への職員会館の使用許可においても、「使用目的」として「職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に限る」という条件を付したのでした。

(4) そして、伏見市長は、2018年12月27日に、枚方市職労に対して、職員会館の平成30年度の使用許可を取り消すことになるので、自主的に職員会館から退去するよう通知してきました。これは、枚方市職労の労働組合としての正当な組合活動を敵視するものでしかありません。

枚方市職労は抗議するとともに団体交渉を申し入れたのですが、枚方市は団体交渉にも応じません。
そのため、枚方市職労は、2019年1月18日、枚方市が組合事務所の明け渡しを求めたこと、及び枚方市が団体交渉を拒否したことについて、不当労働行為救済申立を行うとともに、実効確保の措置申立を行いました。

3 府労委による文書要望

府労委は、2019年2月14日、冒頭に記載の文書による要望書を出しました。勧告が出なかったことは残念ですが、府労委による文書要望は異例であり、非常に重要な意義があります。要望書は、伏見市長による一連の対応が、組合活動の自由を奪う不当労働行為であり、完全に誤っていることを示すものであり、伏見市長に対してこれ以上の不当労働行為を繰り返さないよう警告を与えるものでもあります。

組合事務所の使用許可は一年ごとに出される運用となっています。枚方市職労の組合活動を嫌悪した伏見市長は、次年度の使用許可を出さない恐れもあります。市職労及び弁護団では、伏見市長に労働組合法の趣旨に従った適切な対応をさせるよう、この文書による要望を積極的に活用して、次年度の組合事務所の使用許可を勝ち取るとともに、伏見市長の不当労働行為を正すべく闘っていきます。皆さま、ご支援をお願いします。

(弁護団は、城塚健之、河村学、中西基、谷真介、加苅匠各弁護士と西川大史)

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