思想調査アンケート住民訴訟 大阪高裁で和解

2018年04月15日

弁護士 西川 大史

1 はじめに

橋下徹・前大阪市長が、大阪市職員に対する思想調査アンケートの実施にあたって任命した特別顧問や特別参与への公金支出の違法性を問う住民訴訟について、2018年3月1日に大阪高裁(江口とし子裁判長、角田ゆみ裁判官、三島琢裁判官)で和解が成立しました。

2 事件の概要

橋下前市長は、2012年1月20日、野村修也氏を大阪市特別顧問に任命しました。橋下前市長は、野村氏とともに、既に任命されていた特別顧問1名に加えて、ほか13名を特別参与に任命し、第三者調査チームを設置したのでした。
そして、橋下前市長は、特別顧問らに調査を委託し、2012年2月10日から16日にかけて、大阪市の職員に対して、いわゆる思想調査アンケートを実施しました。

3 第一審の判断

第一審の大阪地裁は、2017年1月13日、アンケート調査は違法である、特別顧問らは附属機関に該当し、法律又は条例に基づいて設置しなければならないにもかかわらず、法律又は条例に基づかずに委嘱されており、特別顧問らへの謝礼等の支出決議及び支出命令は違法であると判断しました。

もっとも、橋下前市長において、特別顧問らが附属機関に該当し、謝礼等の支払が違法であるということを認識し、又は認識し得たとは認められない、仮に特別顧問らが附属機関に該当するか否かについて検討を行っていたとしても、当時の状況において、特別顧問らが附属機関に該当すると認識することができたとは認められないとして、橋下前市長が、故意又は過失により、各支出行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反したということはできないなどとして、原告らの請求を棄却しました。

4 控訴審での和解

これに対して、大阪市民が控訴したところ、2018年3月1日、概ね以下の内容を含め和解が成立しました。

・被控訴人(大阪市長)は、特別顧問や特別参与が附属機関に該当し、その委嘱行為が違法であるとの疑義が生じたことを踏まえて、今後の市政運営において、地方自治法の条項に違反する機関が設置されているとの疑義を生じさせないようにすることを確約する。

・被控訴人は、アンケート調査が違法であったことを確認するとともに、今後、同様の違法行為を繰り返さないことを確約する。

5 まとめ

思想調査アンケートについては、国賠訴訟で違憲違法が確定していましたが、市民らや弁護団としては、住民訴訟においても、橋下前市長の責任を判決で明らかにすべく、5年以上にわたって闘ってきました。しかし、今般、大阪市が今後の市政運営において、地方自治法に違反する附属機関が設置されているとの疑義を生じさせないことや、違法なアンケート調査を繰り返さないことを確約するといった内容に鑑みて、和解することになりました。
民法協会員の皆様には多大なご支援をいただき、ありがとうございました。

(弁護団は、梅田章二、河原林昌樹、豊島達哉、愛須勝也、高橋徹、吉岡良太郎、本田千尋各弁護士と当職)