民法協第57回定期総会のご報告

2012年08月30日

事務局長・弁護士 増 田  尚

 2012年8月25日、大阪グリーン会館2階ホールにて、民法協第57回定期総会が開催され、68名の参加者がありました。
冒頭、萬井隆令会長のあいさつがあり、派遣法「改正」や、「日本再生戦略」で示された「40歳定年制・有期原則」など、労働者の権利破壊の攻撃が始まりつつあり、野田内閣が原発やオスプレイの配備、TPP、消費税など、国民にとって有害な政策を強行していることを批判し、橋下・維新の会が推進する政治的行為の制限に関する条例を受けて自民党が地公法改悪を打ち出すなど、全国に与える影響を軽視することはないと指摘し、総会での具体的な議論を呼びかけられました。

続いて、現在裁判闘争中の4名の方から支援のうったえがありました。ダイキン事件原告であるJMIUダイキン工業支部の青山一見執行委員長は、20年を超す偽装請負を指弾され直用しながら、業績も堅調であるのに、203名も雇い止めにし、従業員を補充するなどのダイキンの横暴に対し、11月1日の地裁判決で雇用責任を果たさせる決意を語られました。泉南アスベスト訴訟弁護団の鎌田幸夫弁護士は、昨年の大阪高裁の不当判決を乗り越え、第2陣訴訟の大阪地裁で勝利判決を獲得したことを報告。他方で、「判例タイムズ」誌上で訟務検事が国の規制権限の行使の裁量の違法を認めると賠償による財政負担が増えると述べ、人命を軽視して産業を優先させる「司法の逆流」をつくろうとしていることを指摘し、これに立ち向かい最高裁での勝利をめざすと述べられました。JAL不当解雇撤回訴訟原告の西岡ひとみさんは、東京地裁の不当判決の後510名を超す客室乗務員が採用され、整理解雇がまったく必要でなかったことが明らかになる一方、職場では、休むことのできない状況が生み出され、「不安全事例」が多発するなどの異常事態が起きており、全員の職場復帰を果たして、航空の安全確保を実現するため、高裁での逆転勝利へのいっそうの支援を呼びかけられました。ビクターサービスエンジニアリング訴訟について、JMIUビクターサービス分会の新垣内均執行委員長が、東京地裁での不当判決以降、「弾丸バスツアー」などの支援を強めて、最高裁での逆転勝利を獲得したことを紹介し、差戻審での勝利と、会社の「兵糧攻め」ともいうべき業務配置差別を止めさせ、条件改善に向けたたたかいを進めていく決意を語られました。

記念講演では、東海林智・MIC議長(前新聞労連委員長)が「99 %の運動を始めよう~市民・労働者を取り巻く情勢に抗して」と題し、労働の現場での資本の乱暴な振る舞いと、これを支える民主党政権の危機に対抗するため、困窮している労働者に寄り添い、連帯と共闘を広げていくことの重要性を訴えられました。
東海林さんは、新聞業界での事例として、ブルームバーグ社でPIP(Performance Improvement Plan)と呼ばれる労務管理手法による退職強要が行われていると紹介されました。これは、実現不可能なノルマを押しつけ、達成できなければ退職を迫るというものです。外資系では、常に、下位にいる従業員を退職に追い込む手法をしており、職員基本条例で導入された相対評価による分限免職で、日本にも導入されようとしていることを指摘しました。また、JAL整理解雇や社保庁の分限免職などに対しても、総労働の立場から抗議の声を挙げるべきであると述べられました。一方、民主党政権下では、消費増税や派遣法「改正」、有期契約法制などがごく短時間の審議で強行されており、さらに、秘密保全法制やTPPなど、なし崩しの突破が企まれていることへの警鐘を鳴らしました。
このような情勢の下、若年・女性労働者は、2人に1人が非正規労働であり、失業が住宅の喪失や生存の危機に直結していると指摘し、プリペイド携帯の料金が支払えず停止されれば仕事の確保もできず、自殺を考えなければならない状況に追い込まれていること、女性労働者が寝泊まりする場所を確保できず、ファストフード店やコンビニを渡り歩き、山手線の始発に乗り込んでようやく眠り込む日々であるなど、異常な状況にあることを告発されました。有期契約法制については、5年の継続雇用での無期への転換が図られるようになったとしても、5年間使用して選別する労務管理へと転換し、その際に、非正規時代の低い処遇が固定化されるなど、「第2正社員」化が起きるのではないかと、韓国の事例を引き合いにしながら、警告されました。
こうした状況に対し、労働組合の役割として、単組や産別の枠に留まるのではなく、連帯や共闘という本来の運動に立ち返り、困窮させられている多数の労働者に寄り添い、1%の富裕層に富が集中する異常な構造に反撃をすることを呼びかけられました。脱原発をめざす官邸前行動における労働組合の活動などを挙げて、声を挙げなければ無視され、声を挙げることで社会を変革する可能性が開かれているとし、そうした変革に立ち上がることを訴えられました。

休憩をはさんで、事務局長より、1年間の総括と新たな活動方針の報告がありました(議案書は、「民主法律」289号に掲載されています。)。この1年には、橋下・大阪維新の会による地方自治、公教育、生活と権利を破壊する動きへのたたかいが、民法協の活動の大部分を占めましたが、その中で、機敏で的確な反撃によって、アンケートの中止などの無法を阻止することができたこと、立場や潮流を超えた共闘が始まりつつあること、自治体職員と住民との共同こそが反撃の鍵であることなどの教訓が得られたことを指摘し、国政進出をねらう維新の会によるファシズムの萌芽の時代において、どう対抗するのか歴史的な検証を受けうるたたかいを繰り広げることを呼びかけました。

討議では、まず、大阪府市問題についての集中討論を行いました。大阪市労組の永谷孝代さんからは、アンケート調査に立ち上がった市職員の悩みと決意を赤裸々に語り、萎縮する職場を変えていくためにも、思想調査国賠と職場での運動を結びつけてたたかう決意を語りました。また、大阪自治労連の大原真さんからは、維新系首長による攻撃に対し、住民と連携した運動で反撃する経験を報告されました。大教組の藤川真人さんは、府で教員評価について不当な攻撃を押しとどめている状況を報告し、学校選択制や授業評価など教育基本条例の具体化を阻止する運動を保護者・地域とともに広げていくことを訴えました。思想調査国賠弁護団の遠地靖志弁護士からは、  月から審理が始まる同訴訟への支援を呼びかけ、傍聴席を満席にして、大法廷での審理を求めていきたいと述べました。藤木邦顕弁護士から、教育基本条例の具体化を阻止する運動のポイントとして、組織・世代を超えた共闘と新たな行動スタイルの模索について問題提起がありました。また、梅田章二弁護士は、おおさか社会フォーラムの活動を紹介し、ウィスコンシン州で公務員バッシングを繰り返した知事を追い込んでいった運動に学ぶことを指摘されました。
その他の議題に関連して、大阪過労死を考える家族の会の塚野信子さんが、ご自身が遺族として提起している過労死行政訴訟(報知新聞事件)での勝利判決への支援を呼びかけるとともに、過労死防止基本法の制定を訴えられました。また、河村学弁護士が、改正派遣法・労働契約法について、政省令や指針、通知なども含めて学習して、どう現場で活用するのかの検討をただちに始めることを呼びかけました。
その後、決算報告と予算の提案、会計監査報告に続き、活動方針案と予算案が採択されました。また、新役員の提案も承認されました。
最後に、城塚幹事長より、橋下市長によるアンケート調査に対して、当該組合をまじえて、土日をつぶして方針を討議し、月曜日には市役所前宣伝を行ってビラを配布するなど、アンケート調査の無法を知らせて職員を励ます行動にただちに立ち上がった経験にふれ、民法協らしい役割を遺憾なく発揮することができたとして、こうした運動を通じて反撃を広げていくことを訴えられました。
総会で採択された活動方針案に即して、様々な分野で、労働者や市民の権利を擁護する活動にとりくまれることを会員各位にあらためて呼びかけたいと存じます。