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裁量労働制Q&A

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【裁量労働制とは?】

Q1会社が裁量労働制の導入を検討しているみたいです。裁量労働制とはどのような制度なのでしょうか。
A1「裁量労働制」は、一言で表現すれば、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払うという制度です。
裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類があります。

(解説)
労働時間は実際に働いた時間によって算定するのが原則です。しかし、業務の性質上、業務の進め方が大幅に労働者の裁量に委ねられ、業務の進め方や時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をすることが困難な業務に従事する労働者には、裁量労働制の適用が可能であり(労働基準法第38条の3、第38条の4)、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなし、その分の賃金が支払われることになります。例えば、「1日8時間」と定めた場合には、実際に10時間働いたとしても8時間働いたものとみなされることになります。
裁量労働制には、専門業務型と企画業務型とがあり、それぞれ対象業務や導入の手続などが異なります。以下、それぞれについて概要を説明します。

【専門業務型】
業務の性質上、業務の進め方や時間配分等について、労働者の裁量に委ねる必要がある業務を行う労働者に適用されます。対象となる業務は厚生労働省令や厚生労働大臣告示に定められています。

・対象となる業務
①研究開発
新商品や新技術の研究開発業務、人文・自然科学の研究の業務
②システムエンジニア
情報処理システムの分析又は設計の業務
③記者、編集者
新聞・出版の記事の取材・編集、放送番組の制作の取材・編集
④デザイナー
衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考察の業務
⑤プロデューサー
放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー・ディレクターの業務
⑥コピーライター
⑦システムコンサルタント
⑧インテリアコーディネーター
⑨ゲーム用ソフトウエア開発
⑩証券アナリスト
⑪金融工学等を用いて行う金融商品開発
⑫大学における教授研究
⑬公認会計士
⑭弁護士
⑮建築士
⑯不動産鑑定士
⑰弁理士
⑱税理士
⑲中小企業診断士

・導入のための手続
制度の導入には、労使協定が必要です。具体的には、
①  職場の労働者の過半数が加入している労働組合が存在する場合はその労働組合との取り決め
②  職場の労働者の過半数が加入する労働組合存在しない場合は、民主的な方法で選出した労働者の過半数の代表者との間での取り決め
が必要です。
また、この労使協定(取り決め)を労働基準監督署に届け出なければなりません。

【企画業務型】
事業運営に関する事項について、企画・立案・調査・分析を行う労働者を対象に適用されます。

・対象となる業務
以下をすべて充たす業務でなければなりません。
①  事業運営に関する事項についての業務であること
②  企画・立案・調査・分析の業務であること
③  業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
④  遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

・導入のための手続
導入のためには以下の手続が必要です。
①  「労使委員会」を設置する
(労働者を代表する委員と会社を代表する委員で構成される委員会のことです)
②  労使委員会の5分の4以上の多数により、一定の事項を決議し、その決議を労働基準監督署に届け出る
③  対象労働者が個別に同意する
④  企画業務型裁量労働制を採用することを就業規則又は労働協約に定める


【裁量労働制が無効なら残業代を請求できる!】

Q2「裁量労働制を導入しているから残業代は出ない」と会社から説明されています。どうやら、専門業務型裁量労働制の適用を受けているようなのですが、残業代は支払ってもらえないのでしょうか。
A2対象外の業務を行っていた場合や、導入のための手続がとられていない場合は、裁量労働制の適用が無効となります(他にも無効となる場合がありますが、ここでは割愛します。)。裁量労働制の適用が無効になる場合、会社は残業代を計算して支払わなければなりません。

(解説)
⑴  対象外の業務を行っていた場合
専門業務型裁量労働制の対象業務は、①研究開発、②システムエンジニア、③記者、編集者、④デザイナー、⑤プロデューサー、⑥コピーライター、⑦システムコンサルタント、⑧インテリアコーディネーター、⑨ゲーム用ソフトウエア開発、⑩証券アナリスト、⑪金融工学等を用いて行う金融商品開発、⑫大学における教授研究、⑬公認会計士、⑭弁護士、⑮建築士、⑯不動産鑑定士、⑰弁理士、⑱税理士、⑲中小企業診断士です。これら以外の業務は、専門業務型裁量労働制の対象にはなりません。
対象業務ではない業務を行っている場合には裁量労働制の適用が無効となります。また、対象業務に関連するものの、付随・補助的な業務にとどまる場合や、対象外の業務も相当程度行っていた場合等には、同じく無効となることがあります。ご自身の業務が対象業務なのか疑問を感じる方は、ぜひ当会(民主法律協会)にご相談ください。

⑵ 導入のための手続がとられていない場合
制度の導入する際には、①職場の労働者の過半数が加入している労働組合が存在する場合はその労働組合と、②職場の労働者の過半数が加入している労働組合が存在しない場合は、民主的な方法で選出した労働者の過半数の代表者との間での取り決めを行い(「労使協定」といいます)、労働基準監督署に届け出なければなりません。
これらの手続がとられていない場合には、裁量労働制の適用は無効となります。これらの手続がきちんととられているか、会社に確認してみましょう。手続がとられていないと疑われる場合は、当会(民主法律協会)にご相談ください。


【労働時間や業務遂行の方法に裁量がなければ無効!】

Q3.裁量労働制が導入されていますが、労働時間や業務の遂行方法について、上司から細かく指示がなされており、裁量があるように思えません。このような状態でも裁量労働制は有効なのでしょうか。
A3.会社や上司が労働時間や業務の進め方について具体的に指示・命令している場合には裁量労働制が無効となり得ます。

(解説)
裁量労働制は、労働時間や業務の進め方について裁量を有する労働者に対して適用する制度です。会社や上司が労働時間や業務の遂行方法について具体的な指揮命令をしており、これらの裁量がない労働者に対しては適用することができず、無効となります。
例えば、裁量労働制の有効性が問題となったエ-ディーディー事件の判決(京都地判平成23年10月31日)では、システムエンジニアへの裁量労働制の適用について、発注元がかなりタイトな納期の設定をしており、業務遂行の裁量性がかなりなくなっていたことや、当該労働者が営業活動にも従事していたこと等を踏まえて、裁量労働制の適用が無効と判断されました。
また、遅刻や早退を理由に給料を減額していたような場合には、労働時間に裁量があるとはいえませんので、このような場合にも裁量労働制が無効になることがあります。
労働時間や業務の進め方に裁量がないと感じる場合、当会(民主法律協会)にご相談ください。

【「みなし労働時間」と実労働時間がかけ離れてはいけない!】

Q4.1日11時間ほど働いていますが、裁量労働制が導入されており、1日の労働時間が8時間と扱われています。あらかじめ定められた時間(みなし時間)と実態があまりに異なるのですが、問題はないのでしょうか。
A4.「みなし時間」と実態がかけ離れている場合には、裁量労働制の適用が無効となる可能性があります。

(解説)
裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払うという制度ですが、この「みなし時間」は、実態を踏まえた適切な時間でなければなりません。「みなし時間」と実態がかけ離れている場合には、裁量労働制の適用自体が無効となることがあります。
また、「みなし時間」と実態が異なる場合には、「みなし時間」自体を変更するということもあり得ます(Q4の場合は実態に合わせて11時間に修正する等)。仮に1日11時間と定めた場合、1日8時間を超える部分は時間外労働となりますので、会社は8時間を超える3時間部分について、残業代を支払わなければなりません。
「みなし時間」に疑問を感じる方は、当会(民主法律協会)にご相談ください。

【プログラマーも裁量労働制の対象?】

Q5.「システムエンジニア」の肩書で働いていますが、実際の業務内容はプログラムの設計や作成が中心です。毎日のように残業があるのですが、会社からは、「裁量労働制を導入しているので残業代は出ない」と言われています。裁量労働制は有効なのでしょうか。
A5.プログラムの設計・作成は裁量労働制の対象業務ではありませんので、裁量労働制は適用できず、無効となります。

(解説)
システムエンジニアの業務(情報処理システムの分析・設計の業務)は専門業務型の裁量労働制の対象業務とされています。①ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、②入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、③システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務がこれに含まれるとされています。一方で、プログラムの設計・作成の業務(プログラマーの業務)はこれに含まれないものとされており、裁量労働制の対象業務とはなりません。
プログラマーに「システムエンジニア」の肩書をつけ、裁量労働制を適用しようとする企業が珍しくありませんが、対象業務であるか否かは実態に基づいて判断されることになりますので、実態がプログラマーであれば、裁量労働制の適用は無効です。
システムエンジニアへの裁量労働制の適用が問題となったエ-ディーディー事件の判決(京都地判平成23年10月31日)においても、プログラムの設計・作成業務が裁量労働制の対象業務でないことが確認されており、この点も考慮された上で裁量労働制の適用が無効と判断されました。
ご自身の業務が対象業務なのか疑問を感じる方は、ぜひ当会(民主法律協会)にご相談ください。

【裁量労働制の適用対象となるデザイナーとは?】

Q6.「デザイナー」の肩書で働いていますが、仕事の内容は図面の作成が中心で、デザインを考える仕事はしていません。毎日のように残業があるのですが、会社からは、「裁量労働制を導入しているので残業代は出ない」と言われています。裁量労働制は有効なのでしょうか。
A6.裁量労働制の対象となるデザイナー業務には、考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者は含まれませんので、裁量労働制は適用できず、無効となります。

(解説)
衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインを考案する業務(デザイナー業務)は裁量労働制の対象業務です。もっとも、業務内容がデザインに関わるものであれば対象業務になるわけではありません。考案されたデザインに基づいて、図面の作成や製品の制作等を行う業務はこれに含まれないものとされています。
対象業務であるか否かは実態に基づいて判断されることになりますので、肩書が「デザイナー」であったとしても、主な仕事が図面の作成であれば、裁量労働制の適用は無効です。
ご自身の業務が対象業務なのか疑問を感じる方は、ぜひ当会(民主法律協会)にご相談ください。


【研究の時間が十分に確保できない大学教授も裁量労働制の対象?】

Q7.大学教授なのですが、裁量労働制が導入されています。講義、教授会などで忙しく、研究の時間が十分に確保されません。裁量労働制は有効なのでしょうか。
A7.大学教授に裁量労働制が適用されるためには、業務の中心が研究の業務でなければならず、研究の業務のほかに講義等の授業の業務に従事する場合に、その時間がおおむね5割に満たない程度でなければなりません。講義・教授会等の業務の時間が全体の5割を超える場合には、裁量労働制の適用は無効となります。

(解説)
大学における教授・研究の業務は裁量労働制の対象業務とされています。もっとも、「主として研究に従事するものに限る」とされています。
大学教授は、研究以外にも、講義や教授会への出席等、様々な業務を行うことがありますが、研究以外の業務を行う時間が全体のおおむね5割に満たない程度でなければならず、これを超える場合には「主として研究に従事するもの」とは認められません。大学教授として研究を行っていれば必ず対象業務となるわけではないのです。
講義、教授会などで忙しく、研究の時間が十分に確保できない状態の場合は、裁量労働制の適用が無効になる可能性が高いです。
ご自身の業務が対象業務なのか疑問を感じる方は、ぜひ当会(民主法律協会)にご相談ください。

【過半数代表者の選出手続は厳格!】

Q8.会社では裁量労働制が導入されています。裁量労働制導入の協定は結ばれているようなのですが、職場には労働組合がなく、代表者を選んだこともありません。裁量労働制は有効なのでしょうか。
A8.裁量労働制の導入には、労使協定が必要です。具体的には、①職場の労働者の過半数が加入している労働組合が存在する場合はその労働組合との取り決め、②職場の労働者の過半数が加入する労働組合が存在しない場合は、民主的な方法で選出した労働者の過半数の代表者との間での取り決めが必要であり、過半数代表者の選出には厳格な手続が定められています。

(解説)
裁量労働制の導入にあたって、職場の労働者の過半数が加入する労働組合が存在しない場合は、労働者の過半数の代表者との間での労使協定が必要です。過半数代表制度について、法律の規定は十分に整っているとはいえず、労働基準法施行規則第6条の2に、過半数代表者は「以下の各号のいずれにも該当する者とする。」として、「1 法41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。」「2 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。」と規定されているだけですが、この規定からも過半数代表者の選出にあたって、以下の事項が少なくとも確認できます。
第一に、過半数代表者を選ぶことのできる労働者は、その事業場で働くすべての労働者でなければなりません。
第二に、過半数代表になれる労働者(被選出資格労働者)は、労働基準法第41条第2号が定める監督又は管理の地位にある者ではないこと(労基法施行規則6条の2第1項1号)が必要です。労働基準法が適用される労働者ではあるものの割増賃金の規制が適用されない管理監督者は、過半数代表となることはできないということです。
第三に、過半数代表者の選出方法は、「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続き」(労基法施行規則6条の2第1項2号)によらなければなりません。なお、「投票、挙手等」の「等」には、労働者の話合い、持ち回りの決議等、労働者の過半数が選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが該当するとされています(平成11年3月31日基発第169号)。すべての労働者の個別的な意思が確認されることが重要であり、会社の意向に沿った選出がなされてはならないということです。

【「企画業務型」の導入手続は厳格!】

Q9.企画業務型裁量労働制の適用を受けているようなのですが、残業代は支払ってもらえないのでしょうか。
A9.対象外の業務を行っていた場合や、導入のための手続がとられていない場合は、裁量労働制の適用が無効となります(他にも無効となる場合がありますが、ここでは割愛します。)。この場合、会社は残業代を計算して支払わなければなりません。

(解説)
企画業務型裁量労働制は、対象となる業務が具体的に特定されていないため、導入のための手続が専業務門型よりも厳しくなっています。手続が正しくとられていない場合には、裁量労働制の適用は無効となります。また、対象となる業務といえるためには、一定の条件を満たさなければなりません。この条件を充たしていない場合には、裁量労働制の適用は無効となります。
導入のための手続や対象業務は以下のとおりです。ご自身の業務が条件を充たしていない場合や、導入のための手続が正しくとられていないと疑われる場合には、当会(民主法律協会)にご相談ください。

・対象となる業務
以下をすべて充たす業務でなければなりません。
①  事業運営に関する事項についての業務であること
②  企画・立案・調査・分析の業務であること
③  業務の性質上その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
④  遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

・導入のための手続
ⅰ「労使委員会」を設置する
(労働者を代表する委員と会社を代表する委員で構成される委員会のことです)
ⅱ労使委員会の5分の4以上の多数により、一定の事項を決議し、その決議を労働基準監督署に届け出る
ⅲ対象労働者が個別に同意する
ⅳ企画業務型裁量労働制を採用することを就業規則又は労働協約に定める

【「柔軟な働き方」=「裁量労働制」ではない!】

Q10.裁量労働制の運用に不満を感じているのですが、労働時間等について一定の裁量があり、柔軟に働けることには魅力を感じているため、会社には何も言えずにいます。柔軟に働くためには今の状態を続けないと仕方がないのでしょうか。
A10.「柔軟な働き方」は裁量労働制以外でも実現できます。

(解説)
よくある誤解なのですが、「裁量労働制が適用された結果、労働時間等の裁量が認められる」というわけではありません。裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなし、その分の賃金を支払うという制度ですが、それ以上の効果をもたらす制度ではありません。
「柔軟な働き方」を実現するための制度は、労働基準法に定められています。それが「フレックスタイム制度」です。「フレックスタイム制度」は、予め定めた総労働時間の範囲内で、労働者が、日々の始業・終業時間を決めることができる制度で、仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くための制度です。
「柔軟な働き方」の実現のため、フレックスタイム制度の導入について会社と交渉することを検討してもよいかもしれません。労働組合に加入して、会社と交渉するという方法も効果的です。会社内に労働組合がなくても、産業別や地域別の労働組合に加入して、会社と交渉することも有用でしょう。

【対象業務の拡大に反対しよう!】

Q11.裁量労働制を適用できる業務が追加されるというニュースを見ました。どのような業務が新たに対象になるのでしょうか。また、対象業務が追加されることに問題はないのでしょうか。
A11.省令の改正により、銀行・証券会社のM&A(合併・買収)コンサル業務が新たに追加される見込みとなっていますが、民主法律協会は業務の追加に反対しています。裁量労働制は長時間労働を助長する制度ですし、不適切な運用も指摘されています。今からでも反対の声を発信していくべきです。

(解説)
厚生労働省の「労働政策審議会」は、2022年12月、裁量労働制の対象業務の追加等を内容とする報告書を公表しました。その報告書では、専門型の対象業務に銀行・証券会社のM&A(合併・買収)コンサル業務を追加するとされています。
しかし、対象業務の追加・拡大には反対です。
そもそも、裁量労働制で働く労働者は長時間労働に陥りがちなのです。2021年6月、厚生労働省は、裁量労働制が適用される労働者の実態調査の結果を公表しました。裁量労働制が適用されている労働者の1日の平均的な労働時間が9時間であったのに対して、適用されていない人は8時間39分でした。また、月80時間以上の残業(いわゆる「過労死ライン」)は、過労死をしてもおかしくない働き方であると言われますが、裁量労働制が適用されている労働者のうち、8.4%もの人がこれに当てはまります。裁量労働制が適用されていない労働者では4.6%にすぎませんので、裁量労働制がいかに長時間労働をもたらすかがわかるでしょう。
まずは裁量労働制で働く労働者の労働時間を減らすことを目指すべきであり、安易に対象を拡大すれば、長時間労働に陥る労働者を増やしてしまうだけなのです。
また、裁量労働制については、自分の「みなし時間」を認識していない人が多い、「みなし時間」が実態とかけ離れている、仕事の進め方に裁量がない人にまで適用されてしまっている、対象業務ではない業務にまで適用されているなど、様々な不適切運用が問題になってきました。
長時間労働や不適切運用の問題をまず解決すべきであり、対象業務を追加すべき状況ではありません。皆さんもこの問題に声をあげていきましょう!

【「私の業務とは関係ない」ではいられない!】

Q12.裁量労働制に問題がありそうだということはわかったのですが、M&Aのコンサル業務は私の仕事と全く関係がありません。あまり気にしなくてもいいんじゃ…
A12.裁量労働制の対象業務は追加され続けてきました。今の仕事と関係がないからといって静観していると、今度は他の業務も追加されるかもしれません。対象業務の追加に、NOの声を広げていきましょう!

(解説)
裁量労働制は、1988年に創設された制度です。当初は専門業務型しかなく、対象業務は5業種(新商品の研究開発、デザイナー、記者、ディレクターなど)でした。その後、1997年に6業種(コピーライター、不動産鑑定士、弁護士、建築士、公認会計士など)が追加され、2000年には企画業務型が創設されました。その後、2002年と2004年に専門業務型の対象業務が追加されています。対象業務が追加されてきたのは、経営者側から、対象業務の追加の要請があったからです。いくら働かせても「みなし時間」だけ働いたものと扱うことができてしまう裁量労働制は経営者側にとって都合の良い制度であり、対象業務を拡大して欲しいという要望がありました。
このように、裁量労働制は、制度が創設されてから、経営者側の要請に応じる形で、段々と対象業務が追加されてきたのです。どこかで食い止めないと、どんどん対象業務が増えていってしまう危険があります。
実は、同じような経緯は他の制度でもありました。今では、派遣会社から派遣されて働く「労働者派遣」の形で働く人が少なくありませんが、昔は労働者派遣自体が禁止されていました。1986年に労働者派遣が解禁されることになりましたが、解禁当初は、労働者派遣ができる業種が専門的な知識や技能を有する13業種に限定されていました。しかし、その後、法改正等により対象業務が追加され続け、1999年には原則として業種が自由化されてしまうことになったのです。どこかで食い止めておかないと、経営者側の要請に応じる形でどんどん拡大してしまうのです。
「今の仕事と関係ない」と思ってしまいがちですが、今後、他の業務も対象にする動きがありうるでしょう。よく考えてみると「労働者全体の問題」なのです。だからこそ、今回追加されそうになっているM&Aのコンサル業務に関わる人だけでなく、様々な業種・業界で働く人にNOの声を上げてほしいのです

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