１　２０２３年６月３日から５日にかけて、トランスジェンダーであることを公表している大阪弁護士会所属の弁護士に対して、「男のクセに女のフリをしているオカマ野郎をメッタ刺しにして殺害する」などの殺害予告を含む匿名のメッセージが送られた。

この殺害予告は、当該弁護士に対する脅迫であり、弁護士業務を妨害する悪質な行為であることはもちろん、同人がトランスジェンダーであることを認識し差別表現を用いて殺害を予告するヘイトクライムであり、看過することができない問題を含んでいる。

２　ヘイトクライムは、特定の属性を持つ個人や集団に対する偏見や憎悪により引き起こされる犯罪行為である。当該個人に対する被害にとどまらず、当該属性を持つ人々全体に悲しみ・恐怖・絶望を抱かせ、個人(人間)の尊厳（憲法１３条）を深く傷付ける行為である。

ヘイトクライムによって性的マイノリティへの差別意識や憎悪感情が助長され、さらなるヘイトクライムの土壌が形成されることにより、性的マイノリティに重ねての恐怖を与える。このように性的マイノリティを貶め、社会の分断を招くことは、民主主義社会の基盤そのものに対する侵害でもある。

また、今回の殺害予告は、自分と異質なものを排除するというものであり、社会的弱者の包摂や共生でない社会になりかねず、断じて許すことができない。

３　民主法律協会は、労働者をはじめ社会における差別を許さないという決意のもと、社会的に弱い立場にある者の権利を守り、あらゆる差別と闘ってきた。

ヘイトクライムのみならず、ヘイトクライムの土壌になり得る差別的言論や思想を社会から根絶し、一人ひとりの個人が尊重され、差別のない共生社会を実現するために、今後も活動していくことを表明する。

２０２３年６月９日
民 主 法 律 協 会
会長　豊川 義明