決議・声明・意見書

決議

新型コロナ禍の中で、政府に対し従前の政策を転換させ、 真の労働者・就業者保護のための政策を行うよう求める決議

1 新型コロナ禍における働く者の状況と企業・政府が果たすべき責任

新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、世界の感染者数は2億1千万人を超え、死者数も440万人を超えている(2021年8月22日)。感染拡大から1年半以上が経過した現在も収束は見通せない。さらにオリンピック・パラリンピックの開催強行も原因の一つとなって感染がかつてない勢いで拡大する中、新型コロナ禍を理由とする解雇・雇止め・派遣切り、シフトカットなどが続いている。厚生労働省の発表によれば、新型コロナの影響による「解雇」や「雇い止め」が見込みを含めて累計11万3千人を超えている(同年8月13日)。また、フリーランスに対しても、契約解除がなされるなどの事態が相次いでいる。このような失職や収入の減少などにより生活に困窮する者も多く、生活保護の申請や生活困窮者自立相談窓口への相談などが相次いでいる。

このような状況において、働く者の権利擁護・生活保障のため、企業は使用者としての責任を果たし政府は所得保障などの補償や社会保障給付の拡充を行うべきである。

2 医療・介護・福祉・公衆衛生の現場での長時間労働の問題と政府が果たすべき責任

「第4波」の際には医療崩壊が起き、自宅療養中に死亡する感染者も相次いだ。にもかかわらず「第5波」で政府は重症者以外の患者の自宅療養の方針を示すなど、医療崩壊が全国的に生じ始めている。

保健所や感染症指定医療機関など感染症対策の現場や市民の相談業務をはじめ、医療・介護・福祉・公衆衛生に携わる労働者の奮闘によりなんとか現場が回っている状況にあるが、これら労働者の長時間労働が深刻な問題となっている。とりわけ医師など以前から長時間労働が蔓延していた労働者に「働き方改革」の必要性が指摘される中で、それに真っ向から反する事態となっている。

政府は、ただちにこのような現場での人員体制の拡充などの措置をとるべきである。

3 現在の状況を招いた企業・政府の姿勢

そもそも、上記のような状況を招いている背景に、利潤追求・コスト削減・雇用責任回避のために、正社員を非正規雇用や業務委託で代替し、労働者の権利擁護をおろそかにしてきた企業の姿勢や、自助・共助を強調して社会保障を改悪し、医療・介護・福祉・公衆衛生の分野での行政責任を後退させてきた政府の姿勢がある。特に、保健所を1993年の848から470(2021年)に減らし、感染症病床を削減するなど、「効率化」の名の下に公衆衛生行政を後退させてきた政府の責任は重大である。

また大阪においては、医療・福祉・公衆衛生など住民サービスを後退させ、コロナ禍において不要不急の二度目の「都構想」住民投票(2020年11月1日)を強行し、今年6月には重症病床をいったん削減するなど、無為無策ともいえるコロナ対応を続けてきた維新の会の責任も重大である。

政府は十分な医療体制、人員体制を今なお整備しようとせず、むしろ給付金を支給してまで病床削減を含む「病床機能再編支援事業」を進める改正医療法を成立させ、また440の公的・公立病院の再編統合を今もって撤回しないなど、行政責任を全く果たしていない。政府はいまだに、市民に自粛を求め、実質的には事業者のみに負担を課す緊急事態宣言を繰り返すなど、場当たり的な対応に終始している。

4 今こそ政府に政策を転換させる必要がある

ともすれば、この機に乗じて、規制緩和の方にさらに舵を切り、非労働者化政策による雇用責任の回避や均等待遇の骨抜き化などが進められるおそれがある。また、厚生労働省の実態調査においても、裁量労働制で働く労働者の労働時間が一般よりも長くなっていることは明らかであるにもかかわらず、テレワークなどの新しい働き方を口実に、労働時間規制の緩和が狙われることも懸念される。自助、共助を強調し、行政責任をさらに後退させるおそれもある。

現状に対する補償を求めるだけでなく、政府に今までの政策を転換させ、真の労働者・就業者保護のための労働政策を行い、国民の生存権保障を図る社会保障政策を充実させ、さらには医療・介護・福祉・公衆衛生政策の見直しを求めていく必要がある。

5 全ての働く者の権利擁護・国民の生存権保障のために当会が果たすべき使命

現在、このような権利擁護のための新たな運動が広がりつつある。人が集まることが困難な中で、オンライン集会やネット署名、Twitterデモなど新たな運動の形が定着し、フリーランスによる労働組合の結成や幅広い団体の共同アクションも進み、世論を動かす運動につながっている。コロナ禍の中で最後のセーフティネットたる生活保護に対する風向きも変わりつつあり、厚労省がホームページで「生活保護は権利」と掲載し、さらには大阪地裁で生活保護基準の引き下げを違法とする画期的判決も出された。

今こそ、全ての働く者の権利擁護、そして国民の生存権保障のため、憲法を活かし守り、あらゆる形であらゆる団体と連帯した市民運動を構築する必要がある。労働者、労働組合、弁護士、研究者、市民団体が集う民主法律協会は、この運動の最前線に立って奮闘する決意を宣言する。

2021年8月28日
民主法律協会第66回定期総会

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