決議・声明・意見書

決議

「解雇の金銭解決制度」の導入を許さない決議

 安倍政権は、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を設置し、2015年10月末より、「解雇の金銭解決制度」導入へ本格的に動き出した。

 「解雇の金銭解決制度」とは、解雇が無効の場合に、使用者が、一定の金銭を支払うことにより雇用関係を終了させることができる制度である。これは、2014年6月24日付け、2015年6月30日付けの「日本再興戦略」閣議決定が、「雇用終了を巡る紛争処理の時間的・金銭的な予測可能性を高め、」「透明かつ公正・客観的でグローバルにも通用する労働紛争解決システム」としているとおり、解雇が違法無効であっても、使用者が解雇時に予見できる範囲の一定の金銭を支払えば労働者を放逐できるようにするための制度というべきである。

 現行法下でも、地位確認の訴訟や労働審判において労働者が希望すれば解決金等の支払いによる和解や調停が可能であって、労働者が選択する金銭解決制度は既に存在しており、現段階で制度導入の必要性は全くない。また、解雇無効の判決が出た後であれば、労働者は現職復帰を望むのがほとんどあろうし、労働者側からの申し出のみを認めるとしても、一律に一定額の金銭支払いを制度化することは事案に応じた当事者の納得のできる適正な解決を困難とし、むしろ、現在の解決水準を押し下げる危険性さえある。しかも、訴訟をやっても法律上一定額しか取れないなどと使用者側が労働者側へ働きかけて、訴訟制度等の利用を妨げることも十分予想される。

 そもそも、強行法規である解雇権濫用法理を予測可能性が困難であることを理由に緩和することは到底許されないところ、「解雇の金銭解決制度」の導入は、解雇に客観的かつ合理的な理由がなくとも、一定額の金銭さえ支払えば解雇できるという風潮を生み出しかねず、安易な解雇を誘発する恐れが極めて強い。これでは、長年の労働者の権利闘争によって形成されてきた解雇権濫用法理は事実上無に帰し、解雇規制そのものを根底から覆すことに途を開くものである。

 労働は、労働者にとって生活の糧を得る場だけでなく、自己実現の場でもあり、労働契約関係の維持及び存続はそれ自体に価値がある。解雇の脅威は労働者の使用者への人格的従属を強め、その結果、労働者の人間としての尊厳を侵害する。

 民主法律協会は、「解雇の金銭解決制度」の導入を決して許さない。

2016年2月13日
民主法律協会 2016年権利討論集会

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